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タクシートリビアvol.1「なぜタクシーは同じ道でも運賃が変わるの?」

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タクシーは乗った距離に応じて運賃が決まる交通機関です。
しかし同じ乗降地で同じ経路であっても、乗るたびに運賃が異なるという経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。
これは距離だけではなく「時間距離併用制運賃」という制度がタクシーには適用されているためです。
このため、信号や渋滞によりタクシーが停まっていても運賃が上がることがあります。
タクシー会社でも正確に理解している人は少ない時間距離併用制運賃という制度を詳しく説明します。

 

 

時間距離併用制運賃とは

時間距離併用制運賃の概要

地方運輸局の公示では

時間距離併用制運賃は、一定速度(限界速度といい、10km/Hを超えないものとする。)以下の走行速度になった場合の運送に要した時間を加算距離に換算し、距離制メーターに併算する。

と定められています。

これだけではあまり意味がわからないと思いますが、タクシーの時間距離併用制運賃の詳細はあとで説明します。
京都MKの普通車タクシーの場合、具体的には時間距離併用制運賃は「1分50秒80円」と定められています。
時速10km以下というのは時間距離併用制運賃に関する全国共通ルールですが、この○秒△円というのはタクシー事業者によって異なります。
運賃メーターの加算運賃□m△円に応じて時間距離併用制運賃は機械的に決まります。

まずは、時間距離併用制運賃があるため、停車を含め時速10km以下であっても、運賃メーターは約1分50秒で80円(京都MKの場合)というペースで回り続ける、ということを理解してください。
なお、この時速10km以下というのは、一般道における渋滞の定義です。

タクシーの運賃メーターの基本

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運賃メーター

タクシーの運賃メーターは、タイヤの回転数を測定することで距離に換算し、その距離に演算を行うことで運賃額を表示します。
運賃メーターは計量法に基づく「特定計量器」で、1年に1回計量検定所で検定を受けて厳重な封印を受けます。そうすることで、タクシー運賃の正確性が公的に担保されています。

時間距離併用制運賃の歴史

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ミナミタクシー時代の車両

タクシー・ハイヤーの歴史は時間を単位に算出した運賃制度から始まりましたが、1912年に東京のタクシー自働車株式会社が日本で初めてタクシーメーターを装着した車両で営業をはじめ、距離をベースにした運賃が基本になりました。

戦後、都市部における交通渋滞が社会問題化し、同じ距離(=運賃)の運送であっても10分で済む場合もあれば、1時間かかる場合も生じるなど、タクシーの時間当たりの売上に大きな差異が発生するようになりました。
そこで、タクシー業界労使の要望を受け、時間と運賃のバランスを是正し、時間当たりの売上の差異を縮めるため、タクシーに1970年に新たに時間距離併用制運賃が導入されました。
そのため、走行距離が同じであっても、途中の信号の引っかかり方や混雑具合で時間距離併用制運賃が適用され、タクシー運賃がばらつくようになりました。

この時間距離併用制運賃は、タクシードライバーにとっては、渋滞等による機会損失を補うために合理的な運賃制度です。
しかし、利用者にとってはタクシーは「乗ってみないと運賃がわからない」「(鉄道と違って)遅い方が高いのは不合理」とタクシーが利用者に敬遠される一因にもなってきました。

時間距離併用制運賃の適用除外

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スーパーサイン(空車表示器)の表示

時間距離併用制運賃は適用が除外される場合があります。
運賃メーターを「高速」「支払」に操作した場合です

  • 高速

タクシーが高速道路を利用時に適用されます。
乗客が余分に高速代を支払っているのに、渋滞などのせいでタクシー運賃が上がるのを防ぐという趣旨で、時間距離併用制運賃が適用除外されています。

  • 支払

降車時にタクシー運賃を支払うときに適用されます。
いざ運賃を支払おうと停車中のタイミングでメーター表示の運賃が上がると具合が悪いためです。
なお時間距離併用制運賃が適用されないだけで、いったん支払にしても、「やっぱり、もうちょっと動いて」と走ると距離制運賃が適用され、タクシー運賃が上がる場合があります。

「高速」も「支払」も名称が異なるだけで、時間距離併用制運賃除外という機能としては同一です。

時間距離併用制運賃の仕組み

タクシーの時間距離併用制運賃のわかりにくい仕組みについて、順を追って説明します。

分かりやすく説明するため、
 0分      発車
 1~3分   時速60kmで走行
 4~8分   信号で停車
 9~10分 時速60kmで走行
 12分    到着
という例を考えます。

時間距離併用制運賃がなかった場合

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時間と速度

時間と速度をグラフにすると、シンプルにこのようになります。

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時間と距離

そして、タクシーの走行距離はグラフのとおり、6kmとなります。
4~8分の停車中は距離は増えません。

時間距離併用制運賃がある場合

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時間と速度

時間距離併用制運賃があると、タクシーの運賃メーターは、速度をこのグラフの緑線のとおり認識します。
単純に時速10km以下の場合も、時間距離併用制運賃によって時速10kmの速度で走行しているとして運賃を計算します。
4~8分の停車中も、タクシーの運賃メーターは回り続けます。

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時間と距離

結果として、タクシーの運賃メーターは走行距離をこのグラフの緑線のように認識します。
4~8分の停車時間中も、タクシーの運賃メーターは回り続けていることがわかるでしょう。
今回の例でいうと、最終的に725m長い6,725m分の運賃が時間距離併用制運賃によってタクシーの運賃メーターに表示されます。
このように、途中の信号待ちや渋滞等の状況により、時間距離併用制運賃のために実際より長い距離を元にした運賃が運賃メーターに算出されるため、乗車ごとにタクシーの運賃がばらついてしまうのです。

よくある誤解

ここで、タクシー会社内であってもありがちな、時間距離併用制運賃にまつわる誤解を正しておきます

  • 時間制運賃と時間距離併用制運賃は似たようなもの → 全く別の制度

時間制運賃は、30分○円など、文字通り時間を単位として計算する運賃です。
いわゆる貸切運賃で、冠婚葬祭や観光などの特殊な運送で適用されます。

時間距離併用制運賃は、距離制運賃の一種で、時間も距離に換算して計算する運賃です。普通にタクシーに乗ると適用されます。

  • 時間距離併用制運賃が1分50秒80円の場合、タクシーが連続して1分50秒間時速10km以下で走行あるいは停車した場合のみ、時間距離併用制運賃は適用される → たとえ1秒でも適用

1秒でも2.78m※ずつ距離が加算されていきます。
この値は運賃水準に関わらず全国全てのタクシーで同一です。
※10,000m÷3,600秒(1時間)=2.78m。

  • 時速10km未満になったら、タクシーの運賃メーターは距離ではなく時間を単位として運賃を計算するように切り替わる → 全て距離に換算

時間を距離に換算して計算します。時間距離併用制運賃は1分50秒80円という表記のせいで余計にわかりにくくなっている面があります。
冒頭の地方運輸局公示で時間距離併用制運賃について「時間を加算距離に換算」と書かれているとおりです。

理解度確認テスト

わかったような、わからないような・・・そんな人は次の問題にチャレンジしてみましょう。

以下、初乗2km610円/加算297m80円と仮定した場合の、具体的な計算例です。
前提として
時速10km=10,000m÷60分=166.6m/分
です。

Q1. メーターを入れて動かず停車していると、何分後に610円→690円になるか?

 

 

答え A1. 12分後
初乗2kmなので
2000m÷166.6m/分=12分

 

 

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時間と距離

グラフのとおり、1分間あたり166.6mを刻み続けるタクシーの運賃メーターが2kmに達するのが12分後である。
これは、初乗距離が2kmであれば、初乗運賃が500円だろうと、800円だろうと変わらない。

Q2. 実車メーターを入れて時速10km以下で走行を続けると、何分後に610円→690円になるか?

 

 

答えA2. 12分後
1と同じ計算式。

 

 

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時間と速度

グラフのとおり、タクシーが時速9kmだろうが時速0kmだろうと、同じ結果になる。

Q3. 運送の途中で停車する場合、何分経過ごとに80円加算されるか?

 

 

答えA3. 1分47秒
加算距離297mなので、
297m÷2.78/秒(166.6m/分)=107秒=1分47秒
認可上は1分50秒80円と記載されているが、便宜的に5秒単位に切り上げてわかりやすく表記しているだけである。

 

 

Q4. 実車メーターを入れて1km走行後、停車すると、停車から何分後に610円→690円になるか?

 

 

答えA4. 6分後
あと1kmで2kmに達するので
(2km-1km)÷166.6m/分=6分

 

 

Q5. メーターを入れてそのまま停車していると、1時間後に何円になるか?

 

 

答えA5. 2,170円
時速10kmなので、1時間後には10km走行と換算
10km走行時の運賃は
610円+(10km-2km)÷297m×80円=610円+27×80円=2,170円
→2,170円
たまたまだが、時間制運賃(貸切運賃)の半額程度に相当

 

 

事前確定型運賃へ

複雑そうに見えて、きちんと理解すると、何ということはないタクシーの時間距離併用制運賃。

前述のようにこの時間距離併用制運賃は、タクシードライバーにとっては合理的な制度ですが、利用者にとっては事前にタクシー運賃がわからないという、タクシー利用敬遠の一因でもありました。

そのため、近年では交通状況の改善を背景に、「事前確定型運賃」として、配車アプリ経由など条件付きではありますが、タクシーに時間距離併用制運賃を適用しない運賃が制度化されつつあります。
MKタクシーでも順次導入を予定しています。