京都の隠れた桜の楽園「原谷苑」は遅咲きの八重紅枝垂桜が降り注ぐよう
京都に数ある有名桜スポットと比べると知名度では劣りますが、本当にものすごい桜を見られる隠れた穴場が原谷苑です。
頭上から降り注ぐような八重紅枝垂桜は、原谷苑ならではのものです。
まさに空気がピンク色に染まったかのように感じます。
原谷苑で桜を心ゆくまで堪能しましょう。
2024年は4月8日ごろにすでに見頃を迎えています。
原谷苑の桜
4月中旬が見頃の遅咲きの桜スポット
見頃は4月中旬~下旬
- 4月中旬~下旬に見頃の八重紅枝垂桜とサトザクラ
知る人ぞ知る桜の別天地
原谷苑は、京都屈指の美しい桜を心ゆくまで味わえる、桜の別天地ともいうべきスポットです。
お寺でも神社でも公園でもなく、原谷苑は他の桜スポットとはちょっと雰囲気が異なる桜スポットです。
原谷苑の桜の美しさと比べると、知名度はそれほど高くはありません。
といっても閑散としているわけではなく、八重紅枝垂桜のピーク時は原谷苑はかなりの人出で混雑します。
もう穴場とは言えませんが、原谷苑は知る人ぞ知る桜スポットです。
桜の別天地といいたくなる理由のひとつに、原谷苑のある原谷という地のロケーションがあります。
原谷は、仁和寺の裏あるいは金閣寺の裏から急傾斜の車道を標高差にして100m上った先にあります。
かつては平家の落ち武者村があったという伝説まであるくらいです。
後述のとおり、原谷は戦後になって開拓された新天地です。
原谷苑のある原谷へのアクセスとして、市バスのM1系統がは通っていますが地元住民優先のために推奨されていません。
西大路通のわら天神前発着の無料送迎バスが原谷苑への主たるアクセスですが、桜のピーク期間のみの運行です。
無料送迎バス以外だと、タクシーでのアクセスが原谷苑より推奨されています。
原谷苑に駐車場はないため、例年はマイカーは禁止ですが、2023年は事前予約制で臨時駐車場があります。
原谷と立命館大学前あるいは北大路バスターミナルとを結ぶ京都市バスはM1系統と言います。
京都市バスには、系統番号の前に「臨」や「特」が付く系統はありますが、唯一アルファベットが使われるのが原谷のM1系統です。
臨や特は何となく意味がわかりますが、系統番号に”M”がつく理由は、もともとマイクロバスで運行されていたためです。
1976年の運行開始当初は道路整備が不十分であったのと、利用者がそれほど多くはなかったためにマイクロバスで運行されていました。
しかし、道路整備の進捗と利用者の増加によって1993年にはより大型のバスへと切り替わりました。
すでにM1系統という名称が定着していたため、系統名を変更することなく現在に至っています。原谷ならではのエピソードです。
御室桜の仁和寺よりすごいかも
原谷苑の桜のメインは八重紅枝垂桜です。
原谷苑自体は3月末頃から開苑されますが、見頃のピーク期間は例年4月中旬です。
ちょうど麓にある仁和寺の御室桜(おむろざくら)と同じ頃に原谷苑の八重紅枝垂桜が開花します。
歩いて40分くらいの距離にある原谷苑と仁和寺を一日で巡る人も多いでしょうが、仁和寺→原谷苑の順番がお勧めします。
仁和寺の桜が京都でも屈指の美しさなのは今さら説明するまでもないでしょうが、原谷苑をあとにとっておいた方が良いです。
ご馳走は最後にとっておきましょう。原谷苑の桜は、それほどの美しさです。
原谷苑の桜は人によって「桜のシャワー」「桜のジャングル」「リアル桃源郷、桜だけど」などいろんな形容をされます。
とにかく、原谷苑では他では味わえない特別な桜を堪能できます。
入苑料は開花に応じた変動制
変動制の入苑料でコスパよし
原谷苑のおもしろいところは、開花状況にとって入苑料が変動するところです。
寺社の拝観料は、本質的にはお布施です。便宜的に額が定められてはいますが、開花状況によって変動するものではありません(例外的に、特別公開の実施や混雑に伴う警備費用など実費を賄うために上がる場合はあります)。
原谷苑は、民間が経営する農園なので、開花状況によって入苑料を自由に変えても不都合はありません。
市場経済による価格設定というよりは、より多くの人に桜を楽しんで欲しいという思いと、過剰な観光客による植物へのダメージを防ぐことのバランスをとるためです。
変動制の入苑料のため、原谷苑はいつ行ってもコスパが優れています。
八重紅枝垂桜の開花前の3月下旬や、八重紅枝垂桜がほぼ散りつつある4月下旬の原谷苑入苑料は300円~400円くらいですが、八重紅枝垂桜の見頃には1,500円します。
1,500円というと、普通の寺社の拝観料の2~3倍程度ですが、原谷苑に行けば誰もが納得の価値があることがわかります。
300円のときでも、八重紅枝垂桜以外にいろんな花が開花しており、原谷苑では値段以上の満足感を得られます。
なお、開花がほぼ平年並みだった2019年の原谷苑の入苑料は
- 3月25日 400円
- 3月28日 600円
- 4月1日 800円
- 4月3日 1,000円
- 4月7日 1,500円
- 4月22日 1,200円
- 4月24日 800円
- 4月25日 500円
- 4月26日 400円
- 4月28日 300円
と変動しました。
開花が早い2023年は3月25日(土)の開苑初日から1,500円の入苑料設定となっています。
桜だけではない原谷苑の花々
原谷苑の主役は、シャワーのような八重紅枝垂桜ですが、脇役も多士済々です。
白の雪柳、黄色のヤマブキ、ピンクの吉野つつじが原谷苑の準主役として脇を固めます。
その他にも、サトザクラ、桃、木瓜(ボケ)、シャクナゲ、利休梅・・・と挙げていけばキリがないくらいのたくさんの花々で原谷苑は彩られます。
多くの花木に名札がかかっているのもうれしいところです。原谷苑はちょっとした植物園です。
多彩な花木は、どこを見ても多彩な色が見られるように工夫されています。
原谷苑は桜のピンク一色ではなく、白、黄、赤、緑がバランスよく配置されています。
開花期間も少しずつずれるように考えられています。
原谷苑の開苑期間中は、いつも花を楽しめるように工夫されているのです。
原谷苑へお花見に来る客層は、他の京都のお花見スポットとはやや異なります。
京都市民の比率がかなり高いのが特徴です。原谷苑では京都へ観光に来た人の割合は低めです。
原谷苑では、京都にたくさんあるお花見スポットを数々見て目の肥えた京都市民も納得の美しい桜を楽しむことができます。
たとえば、原谷苑を歩いているとこんな声が聞こえてきました。
「噂には聞いとったけど、そんな言うほどのもんかいなと思ってて初めて来た。こんなにすごいとことは思わんかった」
「(電話口で)天気が良かったのでふと思い立ってきたけど、ほんまにすごい。今すぐ来るべきや」
原谷苑の桜を目の当たりにしたときの興奮が伝わってきます。
この興奮を味わえるのは、原谷苑初訪問者だけの特権です。
原谷苑の美しい桜を維持するのも簡単ではありません。
2018年の台風21号では、近隣の平野神社でも拝殿が倒壊する被害がありましたが、原谷苑も大きな被害を受けました。
年老いた八重紅枝垂桜は多くの枝が折れるなど、台風前と台風後では原谷苑の様子も大きく変わりました。
八重紅枝垂桜はソメイヨシノと同じく、桜としてはそれほど寿命は長くありません。
原谷苑開苑当初からある八重紅枝垂桜はもう少なく、多くは植え替えられた八重紅枝垂桜です。
新陳代謝を繰り返しつつ、美しい原谷苑の桜は維持されているのです。
食事も楽しめる原谷苑
いつかは食べたい原谷苑のすき焼き
原谷苑のプラスα楽しみ方として、お食事があります。
苑内の青山荘では、御座敷で食事をいただくことができます。
予約しておけば、花見弁当を原谷苑の桜を眺めながらゆっくりと楽しむことができます。
中でも特に人気なのが、すき焼き(6,000円)です。
いつかは原谷苑ですき焼きを食べてみたいものです。
ただし、原谷苑では2024年は花見弁当、すき焼き等の飲食は休業しています。幕の内弁当の彩弁当(1,500円)と桜弁当(2,500円)のみ予約可能です。
原谷苑の床几席に座って桜を眺めながらお弁当をいただくことができます。
幕の内弁当は、2日前までに電話予約が必要です。
原谷苑のお弁当予約専用ダイヤル:075-461-2924
なお、原谷苑への飲食物の持ち込みは禁止されています。
原谷苑内の売店でちょっとした食べ物や和菓子、飲み物などを購入できます。
原谷苑の座敷のある小屋を外からみると、ガラスに映る景色でトリッキーな写真を撮ることができます。知る人ぞ知る構図です。
パッと見ただけではとても不思議な写真が完成します。
外からなので、原谷苑のお座敷を利用しなくてもOKです。
原谷苑の当主による原谷苑ガイド
2021年4月2日にMK公式InstagramによるインスタLIVEで、原谷苑の当主の村瀬さんによって苑内をガイドしていただきました。
原谷苑について
山間部にぽっかり広がる平坦地
標高200mの小盆地
原谷苑のある原谷は、金閣寺、仁和寺の背後の山上に広がる標高200m前後の小さな盆地です。
原谷へは鷹峯、衣笠、御室から道路が通じていますが、いずれも険しい急坂です。この先に平坦地があるとは思えないような道路を登った先に原谷が広がります。
京都盆地からの標高差は100メートルあまりあります。
谷中分水界にも注目
紙屋川(天神川)の源流部に位置し、支流の原谷川が北東に流れています。
原谷の西側は御室川の流域で、支流の宇多谷川が南西に流れています。
かつての原谷川の源流は今の高鼻川の上流部でした。御室川側の浸食が進んだことから河川争奪が行われ、まず原谷川の最上流部が高鼻川に奪われました。さらに浸食が進み、上流部を三宝寺川に奪われました。
2度にわたる河川争奪の結果、原谷川は流域のほとんどを失い、小さな川になってしまいました。
山中に突然原谷の平坦があらわれるのも、かつて原谷川が今よりも大きかったこととも無関係ではありません。
なお、天神川流域と御室川流域の分水界は原谷苑のすぐ東側です。原谷苑は宇多谷川の源流部に位置します。
河川争奪によって生じた原谷の谷中分水界は、「教育上、地形研究上注目すべき地形。多数存在するが典型的な形態を示し、保存が望ましい地形」として京都府レッドデータブックにも掲載されています。
原谷苑を訪れた際は、興味がある方は注目して歩いてみてください。
戦後開拓された原谷
満州引揚者らが原谷を開拓
原谷苑のある原谷は、かつて平家の落ち武者が住み着いたという伝説が残るものの、長く無人の地でした。
戦中に何軒かの家が疎開してきましたが、原谷が本格的に開かれたのは戦後になってからです。
戦後直後の日本は食糧不足に悩まされ、満州をはじめアジア各地からの引揚者らを中心に100万戸を対象にした「緊急開拓事業実施要領」が進められました。
京都府内でも26か所の開拓地が指定され、そのうちひとつが原谷苑のある原谷した。
戦後満州から引き揚げてきた開拓団が1948年に原谷に入植し、開拓がはじまりました。
1951年には文治2年(1186年)創建と伝わり、明治期に過疎により仁和寺へと遷座していた原谷弁才天が還座しました。
原谷は電気などのインフラも未整備な上に、農業に適さない酸性土壌でした。
開拓は困難を極めました。しかし、非常な努力を重ねて農地整備や土壌改良に取り組み、ようやく農業や畜産が軌道に乗りました。
原谷開拓事業は着手から13年の歳月を費やし、完成式は1962年4月21日に行われました。
1967年の段階では、畑毛13.6ha、樹園地ha。乳牛73頭、鶏18,000羽を数えました。
農業・酪農から住宅地へ
1971年には原谷は市街化地域に指定され、京都市バスの路線も開設され、宅地開発が進みました。
今も一部農村風景は残っていますが、原谷苑のある原谷は京都市のベッドタウンとなっています。
市内中心部と比べて家賃相場がかなり安いため、すぐ下にある立命館大学生の下宿地としても人気です。
ただし、原谷へと至る道路は冬季は頻繁に凍結します。学生の原付転倒事故がよく起こっています。
今も原谷苑近くに2010年に開園した原谷中央開拓記念公園には、開拓記念碑があります。
戦後の開拓地に生まれた桜の名所として、原谷苑は京都でも異色の存在です。
原谷苑のある原谷の住所は大北山原谷乾町(おおきたやまはらだにいぬいちょう)と言います。
もともと原谷には、巽(たつみ)、坤(ひつじさる)、艮(うしとら)、乾という4つの地名がありました。
それぞれ北西、北東、南西、南東を意味する方位地名です。
1962年の開拓完成にあわせて地名が統廃合され、原谷乾町となりました。
ただし、原谷の南西端は北区大北山原谷乾町ではなく、右京区鳴滝宇多野谷です。ちょうど立命館大学の原谷グランド付近のみが右京区に属しています。
鳴滝宇多野谷に属するエリアはもともと平坦地ではなく、谷間を埋めて造成した土地です。そのため行政区域が異なるのでしょう。
原谷苑について
原谷苑を運営する村岩農園はもともと鷹峯にありましたが、1957年に開拓が進む原谷へと移ってきました。
さまざまな樹木を植えるも当初はうまくいかず、桜のみが順調に育ちました。
1965年頃に農園内に整備した庭園が評判を呼び、「原谷苑」と命名されて桜の時期には一般公開されるようになりました。
今では原谷苑は桜の名所としてすっかり有名になりました。
原谷苑には、桜だけでも約20種400本以上が咲き誇ります。
村岩農園の本業は原谷苑の経緯ではなく、農園です。
減化学肥料によるさまざまな野菜づくりや花木の苗木などの販売がメインです。
原谷苑の開園期間中も苗木や野菜も販売しています。
野菜や苗木の販売は春だけではありません。桜シーズン以外でも直売所をやっているので、ぜひのぞいてみてください。
入苑情報
開苑期間 | 2024年3月23日(土)~4月25日(木)予定 |
入苑時間 | 9:00~17:00(受付は16:30) |
入苑料 | 400円~1,500円。開花状況に応じた変動制 |
TEL | 075-461-2924 |
住所 | 京都市北区大北山原谷乾町36 |
アクセス | 市バス「原谷」より2分 |
公式ホームページ: 原谷苑・青山荘・村岩農園公式ホームページ 京都 桜
アクセス情報
タクシー おすすめ!
概算の時間は以下のとおりです。
京都駅~原谷苑 35分
四条河原町~原谷苑 30分
三条京阪~原谷苑 30分
北大路駅~原谷苑 10分
わら天神前~原谷苑 5分
概算時間は、混雑状況によっては大幅に伸びる可能性があります。
MKタクシーのご用命は075-778-4141
無料シャトルバス
混雑期のみ、原谷苑による無料シャトルバスが運行されます。
2024年は3月30日(土)~4月14日(日)の運行予定です。
天候によっては運行が中止となる場合もあります。
朝9時より、わら天神の鳥居前から20~30分間隔でピストン輸送されます。
原谷発の最終は16:30です。
わら天神から、京都を代表する桜スポットである平野神社までは、わずか200メートルほどです。
原谷苑への行きか帰りには、ぜひ平野神社にも立ち寄ってください。
京都市バス
北大路バスターミナル・立命館大学と原谷を結ぶM1系統のみです。
ただし、原谷の地元住民の足のため、できるだけ京都市バスでのアクセスは避けるよう案内されています。
北大路バスターミナル~原谷は、1日5便(休日は4便)のみとわずかな本数です。
立命館大学~原谷は、20数便あります。1時間あたり1~3便程度です。
立命館大学までは、京都駅や四条河原町をはじめ、京都各所から10を超える系統のバスが集まっています。
原谷は京都市バスの均一運賃区間内です。
立命館大学で乗り継いだ場合は、乗り継ぎ割引90円が適用されます。
徒歩
健脚者は、ハイキングがてら原谷苑を訪れることもできます。
特に、御室桜の仁和寺から御室八十八箇所霊場巡りを通るコースはおすすめです。
寄り道をしなければ上りで概ね40分程度です。
未舗装の登山道になるのでご注意を。
舗装道路のルートになりますが、金閣寺、源光庵からもそれぞれ徒歩40分程度です。
マイカー
2024年は臨時駐車場はありません。駐車場はタクシーの乗降場として利用されます。
マイカーを利用の際は、わら天神近隣の有料駐車場に駐車してタクシーかシャトルバスでのアクセスになります。
おわりに
これだけ素晴らしい原谷苑ですが、知名度で劣る理由の多くは、アクセスしにくさがあるでしょう。
マイカーでのアクセスは厳禁なので、京都市バスや無料送迎バスを駆使してアクセスするしかありません。
やはり便利なのはタクシーでのアクセスです。
タクシーなら、京都市内のどこからでも原谷苑まで簡単にアクセスすることができます。
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