エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【372】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【372】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2019年4月1日号の掲載記事です。

 

 

本だけ眺めて暮らしたい

そこそこ長生きしたとしても死ぬまでに読み切れない未読の本を既に抱えているのに、読むよりも速いペースでさらに本を買ってしまうのが根本的な問題だ……とわかっていながら、これだけは私にとってどうしようもないことであった。
そして、それでいいのだと思っていた。

が、いくつかの事情が少しずつ重なってきたからか、五、六年前から購入する本の量が次第に減ってきた。
減らすことができた。できるものなのだ。自分でも意外だった。
今では、本を買うのは多かった頃の十分の一、いや二十分の一だろうか。まだ、減りつつある。
もう、未知のおもしろそうな本を積極的に探してまわろうという気を起こすことなく残りの人生を過ごすことができそうにも思える。
あとは、持っている本の中から気の向くままに選んで、読書を楽しめばいい。

ところが、もう本は(まったく……じゃなく、ほぼ)買わないというこれまでにない強い思いから、実際に減らすことができるようになるにつれて、あろうことか本を読もうという気も減ってしまったのだった。
以前、この欄で、本はよく買う時期とよく読む時期があるという話をしたことがある。
本をよく買う時期は、古書も含め書店に行く機会が多く、そこで過ごす時間も長いので本を読む時間が減ってしまう。
逆に、本をよく読む時期は、書店に行く時間が少なくなるので、買う本の量も減る。
つまり、限られた一定の余暇の時間では、本を読むと買うは、表裏の関係になる、と。
この理屈をあてはめれば、本を買うことが減れば読書量は増えそうなものなのに、今度ばかりはそうはならないようだ。

表裏一体である買う時期と読む時期は交互にやってくる。だが、買う時期をなくすために本へ向ける意識そのものを消し去ろうとしたために、読む時期もなくなろうとしているのかもしれない。
次々と現れる新たな本に目を奪われることなく、目の前に今ある本をただひたすら読む。
私にとっては、これからが本当の読書三昧の日々と言えるはずではなかったか。
ただ、この過渡期を経て読書欲が復活し、いよいよ蔵書を片っ端から読み始めたら、芋づる式に新たな興味が湧いてきて、またまた関連書籍を探し求め、本を買い始めてしまうのではないか。それが少々心配ではある。

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

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