山の一家*葉根舎「葉根たより」【31】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2019年7月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
リーリー、夜から明け方にかけて山に響く、あまり聞いたことのない鳥の声。調べてみると、どうやらトラツグミ。夫のげんは山の麓で聞いたことがあるらしいので、気温の変化で山の上に上がってきたのではないか、と。
鳥の鳴き声や草木の名、自然の変化の仕方をまた一つ知ることが、年を重ねることだと感じます。
山々はすっかり豊かな緑になりました。そこに空木、野ばら、エゴ、スイカズラなどの白い花々、足元にはユキノシタ、アザミ、蛇いちご、野いちごなどの花や実が彩っています。鳥たちは、さわやかな風にのり楽しげに唄い、のびやかな気持ちになります。
「蟷螂生(かまきりしょうず)」「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」
カマキリやホタルが現れ始める頃。まだ蚊がいなく、窓を思いっきり開け放っていますが、そろそろ虫たちも増えてくるようです。
<初夏のめぐみ>
寒暖差が大きい日々、水温は低いけれど稲の苗は順調に育っています。
合計約七百メートルの畦塗がやっと終わり、一回目の代掻きで土の調整をし、二回目の代掻きをし、六月十日頃から田植えの予定です。
畑は、お天気の続く日におこし畝を作り、土が落ち着いた後、トマト、ナス、ピーマンカボチャ、里芋、ヤーコンを定植しました。
はちみつは桜、山藤、栃の蜜が採れました。山藤の蜜は初めての収穫。それぞれに香りよく、さわやかな甘み。加熱処理をせず、じっくり収穫するよい菌と酵素たっぷりの生はちみつ、ご興味のある方はホームページからどうぞ。
<できることを信じて>
「普通のお母さんは、もっとテストの点数を気にするんだよ。」ある日、次男すぎなが言いました。そして三男かやは「そやで! 百点とったら百円もらえるんだよ!」と、末っ子らしい。興味なさそうなのは長男つくし。テストの点数よりも、大切に思うことを話しました。
マイペースでまわりをあまり見ないつくし、しっかりまわりを見て、場に応じた気が利く判断をするすぎな、まわりを見つつも想いがはっきりしているかや。それぞれで本当に面白い。子は愛おしい宝。
だから、子供たちが傷つくニュースを見ると、身体の中がねじれるような悲しさを感じます。経済中心の社会、環境や食など、原因は深く複雑に絡み合っていますが、自分にできることがあることを信じて、向き合っていきたいです。
<からだのーと>
六月二十二日は、お日さまの力高まる夏至。少食、プチ断食をしてお日さまの力をたっぷり充電する日です。
その前後二十日は梅雨期。梅干し、梅酢、つゆ草、乾物を利用し、殺菌、防腐、身体の水分調整を。おむすびの手水や酢飯、ドレッシングに梅酢を使うとおいしいです。
うちはまだ畑に野菜が少ないので、保存しておいた乾物、ぜんまい、干し筍、切り干し大根などが大活躍。梅雨期を過ぎると傷みやすくもなるので、この時期にほとんど使い、また来年のこの時期に向けてこつこつと作っていきます。
忙しくも充実した毎日。小さな仕事の積み重ねが大切な、素朴な暮らしを慈しんでいます。
<めぐり草子>
そんな素朴な暮らしの本「めぐり草子 山の暮らし つむぎゆく絵」を出版します。二十四節気を軸に、絵と言葉、写真で綴っています。展示会場、ホームページからお求めください。
・六月七日―七月七日 福知山市佐藤太清記念美術館
・七月六―七日 ART OSAKA ホテルグランヴィア大阪
・七月八日―十三日 個展「めぐり草子」銀座・巷房
(2019年6月8日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)
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