山の一家＊葉根舎「葉根たより」【28】｜MK新聞連載記事
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MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家＊葉根舎（はねや）の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2019年4月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
ホ、ホ、ホ、ケキョ…今年の春はずいぶん早いことやって来ました。
例年なら、まだ雪に覆われている頃なのですが、すっかりとけて二月下旬に鶯がたどたどしく鳴き始め、フキノトウ、ハコベ、オオイヌノフグリが咲きだしてびっくりしました。
まだうまく鳴けない鶯の声にくすぐったい春を感じ、小さな花々との再会は、大好きな友人と会ったように嬉しくなります。
「草木萌動(そうもくめばえいずる)」「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」
陽気に誘われ、草木萌え出し、虫たちは地上に出てくる頃。
てんとう虫も出てきて、今年は山の上でも暦通りです。もうすぐ陰陽調和の春分。真東から昇る太陽に出会えることが楽しみ。
気持ちよくお迎えできるよう、整えていきたいです。
<仕事はじめの春>
田畑の雪がとけると、柔らかい草を求めて鹿が足跡をつけ始めます。
田畑に入る癖がつかないように、雪で倒れた柵を直さなければなりません。
「二月に直すことになるとは！」と、夫のげん。げんにとって雪に閉ざされる冬は、少しゆっくり過ごせる嬉しい季節。
子どもの頃から春になると、「また動き始めなければいけない季節だなあ。」と、感じていたそうです。
もちろん動き始めたら、それが楽しくなるのですが。
げんが杭を打ち、子供たちが網を引っ張りながら柵直し。
電柵やワイヤーメッシュの所は、草を刈ったり、折れた部分を直したり。
しかも山の中の田畑は斜面ばかり、なかなかの大仕事です。
春が早いと、夏野菜の種まきやジャガイモ植えも早くできてしまうなあ、と嬉しいような困ったような表情の夫です。
<お日さまと草>
私も陽気に誘われて、草刈りをしたくなります。
雪でくしゃくしゃになった草を刈りとると、下からフキノトウが顔を出してくれるご褒美付き。
ハコベやセリも瑞々しくおいしそうなので、摘んだり、スケッチしたり、気が付くと草刈りの手が止まっています。
やりたいこと、触れたいものがたくさんになって、私も嬉しいような困るような、幸せな悩みいっぱいの春です。
<からだのーと>
春は菜の花や野草など、青いものを酢味噌などでさっぱりと頂きたくなりますね。
冬に溜まった脂が溶け出し、肝臓に負担がかかりやすくなる季節だからです。
肝臓が弱ると、怒りっぽくなります。
目で選ばずに、身体の真から欲するものを頂くように心がけています。脂物を控え、ぜひ青いものを。
大きな節目の春分には、少食にして小豆粥にするのがおすすめです。
すっきりとした状態で、新たな一歩を踏み出しましょう。
<足元を見つめて>
東日本大震災から八年が経ちました。
あの時、私は幼いわが子たちを健康に育て続けられるのか、とても不安になり、原発や食について学びました。
私が暮らす朝来市から高浜原発までは62・７km、安全な距離ではありません。
朝来市に対策を考えてほしいと思い、請願などの活動もしました。
あの頃、保養に来てくれた福島のお母さんたちへは、今もうちのお野菜やパンのお届けをしています。
この季節にフキノトウを見つけて摘み、喜んで頂くことができる。
今年もそれが当たり前に出来ることが、本当にありがたく感じます。
そして同時にそれができなくなってしまった地を想い、胸がチクッとします。
足元にあるたくさんの問題に向き合い、その下にある尊い光を大切にできるような世界を想い続けていきたいです。
（2019年3月12日記）
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP：https://www.yamano-haneya.com
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1998年12月16日号～2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」（208回連載）
2017年1月1日号～2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」（72回連載）
