山の一家*葉根舎「葉根たより」【17】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【17】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2018年5月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

ホーホーホーホケキョ。今年も鶯(うぐいす)がたどたどしく唄いだす、くすぐったい季節がやってきました。
めぐる季節の中でも、春は特に山も人もみんな嬉しそうです。
その喜びを体現するかのように咲き誇る桜たち。
「さくら」は「咲く」に親愛や感動、神さまなどの意味をもった「ら」がついたものだそうです。
今年は早い開花に大騒ぎでしたね。よく晴れが続き、たっぷり桜を楽しめた春でした。

十数年前、原種の桜の苗を頂き、家の入口に植えてあります。
なかなか花をつけず、夫のげんがもう切ろうか、と言い出した年、聞いていたかのように数輪の花を咲かせました。
そして、今では立派に咲き誇っています。
原種なのでソメイヨシノのようにたくさんの花はつけませんが、瑞々しい黄緑の葉と共に白っぽい花が軽やかに、上品に咲く様子は日本の美を語っているかのようです。

<躍動の春>

京都が満開の頃、うちの山の麓の桜が咲き始め、麓の花が満開の頃、うちの山の桜が咲き始める、という具合に山の春はゆっくりなので、じっくり春を迎えることができます。
食卓にも春がいっぱい。蕗(ふき)の薹(とう)、はこべ、蓬(よもぎ)、土筆(つくし)、野蒜(のびる)、野甘(のかん)草(ぞう)、三つ葉、あさつきなど、光に満ちたおいしさが彩ります。
子供たちも野草が大好きで、もりもり食べて、野山を駆け回っています。

「玄鳥至(つばめきたる)」「鴻雁北(こうがんかえる)」「虹始見(にじはじめてあらわる)」
燕が飛来し、雁は北へ帰ってゆき、虹が現れ始める。
暦にも躍動感を感じます。
そして、やっと春になったと思ったら、もう五月五日は立夏です。
四月十六日から立夏の前日の五月四日は春の土用。
自律神経のトラブルが増えるので、蓬や蕗などの野草や青菜を頂き、少食にし、血液を浄化すると精神が安定してきます。
年度初め、野草の力頂いて、いい始まりにしたいですね。

<山と育つ子供たち>

春休みの子供たち、山に入って遊んだり、屋根に登ったり、三人の笑い声が(たまに泣き声も!)山に響き渡っています。
げんと一緒にじゃがいも植え、落ち葉拾い、薪割や薪運びをしたり、私と一緒におやつ作りやお料理などの家事をしたり。
ご飯作りは大変だけど、助かることの方が多いです。ご褒美をあげながら、楽しくやることを大切にしています。
穴あきズボンや丈が短くなったズボンが増えて、名前の通り(草木から名前をとって、つくし、すぎな、かや)ぐんぐん大きくなってきました。

<つないでゆくこと>

農作業もはじまる春。夏野菜の種まき、苗を定植する畝の準備、里芋の苗作り、田おこしなど、だんだん動きだしました。
私は家での仕事が多いので、田畑は夫に任せています。
田畑がよく似合う人なので、春になるとなんだか嬉しくなります。
そのげんは村の区長三年目。任期は二年ですがお年寄りが多く、交代ができないので相変わらず家と村のことで忙しい日々。
おかげさまで頼もしくなり、ひときわ男前になってきました! と、いうことにして励ましています(笑)
どんどん人が減る山の中の小さな村、将来のためにも様々なことを調べたり、人脈を作ったりと区長の仕事以上に一生懸命やってくれています。
こうしてこつこつとしっかり動いていくことが、きっと未来につながると信じています。
大地とも人ともつながることが、地域おこしの基本だと感じます。

<めぐりゆく力>

おかげさまで京都の個展、たくさんの方にお越しいただき、充実した展覧会となりました。
実りも学びもあり、次の段階への道しるべもできたので、また精進をしてまいります。
私たちは作品やお米、お野菜やパン、蜂蜜などをお客さまへ届けさせていただいていますが、作り出すものだけの暮らしは初め、不安との戦いでもありました。
でも、心を込めて丁寧に、今の自分にとってできる限りのものをいいエネルギーで生み出せば、ちゃんとまわってゆくことを実感できるようになりました。

子供たちが大きくなり、学費などが増えてゆく今も不安が消えたわけではありませんが、目には見えないエネルギーの循環を感じると心が落ち着きます。
お付き合いいただいている皆さまのおかげです。
個展でも、関東から来た私に、こんなにも関西にご縁のある方が増えていたことに感動しました。
頂いた力を元に、まためぐる季節を深く見つめ、何かが立ち現れてくるような画面を作り出していきたいと思います。

6月4日(月)14時~19時は、京都市の堺町画廊で開催される「つながるマルシェ」に作品と商品を出品します。
3・11による保養キャンプへの寄付を目的にしたマルシェです。ぜひお越しください。

(2018年4月9日記)

 

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

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「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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