山の一家*葉根舎「葉根たより」【13】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【13】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2018年1月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

あけましておめでとうございます。素敵な新年をお迎えでしょうか。
新年に発行される新聞ですが、今この時の季節しか書くことができない私。
今年もどうぞひと月遅れの山の便りにお付き合いくださいませ。

<師走の雪>

朝、子供たちのにぎやかな声に目を覚ますと、外は真っ白な銀世界。
キーンとはりつめ、シンと静かに透きとおった空気。
今年は少し早めに、この季節がやってきました。
寒いけれどうっとり見惚れてしまう、美しい世界です。

「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」「熊蟄穴(くまあなにこもる)」「糜角解(さわしかのつのおつる)」
冬気強まり、万物みな閉じふさがり、熊は冬眠、鹿の角が生え変わる頃。
田おこし・麦蒔き・お米や大豆の保存などを終え、まだ少しやり残したことはあるものの、一年の農仕事がめぐり、静かな冬の到来にホッとします。

<大いなる節目、冬至>

子供の頃は年始が好きだったけれど、今は年末の方がぐっときます。
古代から大切にされてきた、大きな節目の冬至があるためかもしれません。
ローマでは冬至に太陽を祭るお祝いをしていたので、クリスマスの起源になったのではないかという説もあるそうですが、ローマに限らず、冬至前の期間は一年間の太陽に感謝を捧げていたそうです。

山の木は冬至までに切ると再生能力が高いのですが、一・二月に切るとその力はかなり落ちます。
十二月十三日は「正月事始め」で掃除などを始め、冬至までに済ませていたというお話も。
古代から続く流れ、草木の生命の流れに添って、私も感謝と共に家などを清めていきたいと思います。

<月夜>

空気が澄んで夜空も美しい冬。
スーパームーンの輝きも素晴らしかったですね。
その日はちょうど、知人のギャラリーカフェで二十五絃の筝とうたのコンサートがあり、会場に私の絵を展示した日でした。
音の虹のような筝、大地からしなやかにのびる大樹のようなうた。
その余韻を感じながら観る月はひときわ輝きが増すようでした。

満月から新月へ向かう期間はデトックスの時。
春菊などの青菜をいただき、新月から満月への吸収の時はちょうど、冬至が訪れます。
この冬も元気に越せるよう、かぼちゃをいただきたいですね。

<秋の子供たち>

大豆の収穫・脱穀・唐箕(とうみ)・豆掃除・干し柿・柿酢・ゆずポン仕込みなど、保存食の蓄えに忙しくも充実する秋。
子供たちも大活躍! 特に唐箕はいい力加減で回してくれます。それぞれの年齢に合わせて仕事も自然に分担。
楽しそうな声を聴きながらの家事は、幸せな気分になります。

落ち葉いっぱいの秋は山歩きもしやすい時。
子供たち、一仕事終えるとキャーキャー言いながら山の中へ。
家の裏の尾根を行ったり来たり。
わざと叫んで熊対策をしたり、木々の隙間から下を見て、今いる位置を確認したり、賢く遊んでいて感心してしまいます。

ある夕方、次男すぎな(十歳)が38・5℃の熱を出しました。
学校を休みたくないと言って、自ら梅干しを二つ食べて、少食にして、翌朝はすっかり元気に! 長男つくし(十三歳)を見習ってしているようでした。
三男かや(五歳)は、眠くなったら先に離れの子供部屋へ一人で行く時があります。
真っ暗な外にある離れ。怖くないなんて逞しい!
みんな私の幼いころとは大違いで、尊敬してしまいます(笑)。

<薪パワーのお餅>

今年はうるち米も餅米もたっぷりとれました。
毎年お客様にも大人気の我が家のお餅。白餅・玄米餅・よもぎ餅・黒米餅。
薪の力で蒸しあげて、夫婦でぺったんぺったん杵つき。三回でもう二十五臼ほどつきました。
薪の力としっかり杵つきで陽性なお餅。心も身体もポカポカと冬を過ごすための大切な逸品です。

<年満月>

十二月の異称に「年満月」という名があるそうです。
今年も様々な学びや想いがたくさんありました。
どれも大切な糧になっていくのでしょう。
そして、美しい季節の巡りを過ごさせていただきました。
たくさんの彩りに満ちて、過ごす月ですね。
一年間、山の暮らしこよみにお付き合いいただきありがとうございます。
また新たな一年もよろしくお願いいたします。
さらに美しい一年になりますように…

(2017年12月8日記)

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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