山の一家*葉根舎「葉根たより」【9】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2017年9月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
カナカナカナ…寒蟬鳴(ひぐらしなく)、山には今年も蜩(ひぐらし)の声が涼しげに響いています。
日の出には目覚ましのように、日の入りには今日もお疲れさま、と。
私は蜩が大好きですが、夫のげんはあまり好きではないそうです。
子供の頃に、蜩が鳴くまで田畑仕事をさせられたせいとか。
いつか好きになれるといな、と思います。
私は夏が苦手でしたが、この暮らしを始めて大好きになりました。どの季節も大変な面もありますが、魅力にあふれていて愛おしいです。
この数年の夏の暑さはとても厳しいですが、今はもう立秋を迎え、山の朝夕は肌寒いくらいです。
立秋の翌日は無限大∞の8月8日、みずがめ座の美しい満月でした。
満月から新月にかけてはデトックス期。夏野菜に豊富に含まれるカリウムは排毒にぴったりです。しかも、このカリウムを含む水分はお茶よりも吸収がよいので水分補給にもってこいなのです。
村の仕事との両立に苦戦中で野菜の種類は少ないですが、畑にはトマトやキュウリ、季節のものは本当にありがたいです。田んぼの稲も順調です。
昨年は苗を大失敗して大変だったので、すくすく育つ稲がひときわうれしく感じます。
これからの台風シーズンも乗り切れますように…。
田だけでなく、各地の被害も少ないことを祈ります。
山の環境と台風は深い関係にあり、山の地下水大量くみ上げで山が崩れやすくなり、雲の形が変わる、というお話を最近聞きました。
目の前にあるもの一つ一つがどこからどのようにやってきたのか、もっと心をかけていきたいですね。
<お父さんのお手伝い>
毎日の洗濯、風呂焚きなどの家事もしてくれる子供たち。
子供がいてくれた方が仕事が減るくらい母を助けてくれます。
お父さんのお手伝いもすっかり頼もしく、 片腕になっているようです。
特に薪作りの時は、父・げんが割って子供が運んで積むので、子供がいなかったら大変です。
他にもジャガイモ堀、草刈、田の草取りなど。子供だからいっぱい遊びもさせてあげたいので、毎日ではなく、楽しめるくらいに。
そして、仕事中にげんは子供たちに、この仕事がどうして大切か、することでどうなるのか、仕事の大切さを語っているそうです。
子供たちはげんをとっても尊敬していて、かっこいいと思っているようでうれしいです。
夏休みはご褒美に、海や滝、映画、美術館など、できるだけたっぷりご褒美をあげています。
<個展・めぐりめぐりいのちまう>
大阪では初めての個展、おかげさまで無事に、実りも学びも多く終了いたしました。
初日のトークの日には、定員を超える方がいらしてくださり緊張しましたが、皆様があたたかいまなざしを向けてくださったおかげで、落ち着いて楽しくお話ができました。
大森のお義父さんの関係の方も多く、天国からお義父さんが見守ってくれているような、支えてくれているような気がしました。
トークの内容は、山や草木と共に暮らす中で感じとっていること、食や環境、暦と身体の関係を大切にすることで生まれてくる感覚、そういった毎日があるからこそ描けること、描きたいこと・話すことで自分の意識が弱い部分を再確認できました。
そこをさらに丁寧に見つめて暮らし、これから、絵とお話で大切なことをお伝えてしていけたら、と思います。
前々から試行錯誤している絵と暮らしの智恵の絵本も、次の個展までには作り上げようと思いました。
精進してまいりますので、楽しみにしていてくださいね!
個展を終えて、ためていた家の仕事・草刈りや梅の土用干し、トマトケチャップなど保存食作り(ケチャップは玉ねぎ、しょうが、にんにくも入れて、かまどで3時間煮詰めます)、薬草を干したりしながら、草木と対話をして次の作品へ向かっています。
大阪へ行く日の朝にムカデに頭をかまれたりもしましたが、(ムカデにかまれたのも初めて!)こういう暮らしのおかげで、慌てずにびわエキスとムカデ油を塗ったら、大阪に着くころにはすっかり治っていました。
季節も暮らしも家族もすべてが愛おしい毎日、感謝で一杯です。
(2017年8月10日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
MK新聞について
「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。
ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。
MK新聞への「あ~す農場」の連載記事
1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)
2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)