山の一家*葉根舎「葉根たより」【3】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2017年3月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
今年もあたたかい冬だなあ、なんて思っていたら…シンシンというより、ズンスんと雪が降り積もりました。
2日間で一気に1m以上積もるのは、夫のげんが小学生の頃以来だとか。
休に積もると雪かきが追いつかないし、重みもすごいので、傷みかけていた薪小屋やお地蔵さんの小屋、古い空き家などが崩れてしまいました。
雪が溶けたらする仕事が増えてしまったけれど、いつも直さなくては、と思っていたので、これを機に気持ちのよいものに作り直そうと思います。
美しくも大変な雪に複雜な想いを重ねながら、春にむけてじっくり力を溜める山の冬です。
〈寒〉
小寒から立春の寒の内は、味噌・かきもち作り。
うちの無農薬無肥料のお米で麹(こうじ)を作り、かまどで蒸した大豆を臼(うす)ででつぶし作る味噌は味わい深し…
「3年経ったら薬」といわれる最高の三年味噌を作ります。
市販の甘いかきもちが苦手な私は、ノンシュガーののり塩味やよもぎ塩味の杵(きね)つきかきもちを作ります。
油で揚げるとしつこいので、薄く菜種油を塗ってトースターで焼くと、ふんわりサクサク! 子どもたちの毎日のおやつにぴったりなのです。
〈冬の日の冒険〉
用事で山を下りる日、予報は雨だったけれど、朝から雪! 山を下りたら雨だけれど、上は雪、なんてことがよくあります。
私は雪道の運転が怖いので、げんと出かけた帰り道。朝日の村への山道で落ちかけたトラックのレッカーで通行止め。
あと1時間はかかるそうなので、ぐるりと回りもう一本の上がり道へ。
冬はあまり使われない道なので、除雪してあるかドキドキ…登っていくと、大きな杉の木が2、3本折れて電線にひっかかり、その下は除雪されていません!!
オロオロする私をよそに、げんは涼しい顔で運転。木の下を無事通り抜けて、帰ることができました。
まるでアドベンチャー!!
子どもたちは、屋根まで繋がった雪を登って屋根上で雪遊びのアドベンチャーな冬を過ごしています。
〈ハッピーバースデー〉
2日は次男すぎなと私の誕生日があります。
すぎなはピザといちごのケーキ、おもちゃのレゴをリクエスト。
ちょうどパンを焼く日なので、薪のパン窯でピザとケーキを焼くことになり、私の誕生日はちょうど満月なので、断食をして身体を整え、絵の制作に冒険する日にしたいな、なんてワクワクしていたら…すぎなの小学校から電話!
鬼ごっこをしている時に前歯を強く打ったので、すぐに病院に連れていってください、とのこと。
3人兄弟の中で一番活発なすぎなはよくケガをしてきました。
最近は落ち着いているなあ、と思っていましたが、誕生日を目前にして…
幸い大したことにはならずほっとし、改めて元気に誕生日を迎えられることの幸せを感じました。
雪の寒さにあたっているせいか、風邪などはちっともひかず、みんな元気に育っていて山に感謝する毎日です。
〈春にむけて〉
予想に反してよく積もる冬になり、春が待ち遠しいですが、立春が過ぎて少しずつ日がのびてきました。
雪の下ではいろいろな命がもぞもぞとしているのかな、と思うと、楽しい気分になってきます。
もう少し雪景色を楽しみつつ、次の大きな節目の春分にむけて心身を整えていこうと思います。
そこで大切にしていることは、手放すこと。
想い、物、身体の老廃物…手放すと本当に新たなものがめぐってきます。
関東から関西の山の中に来て、友人が欲しい気持ちを忘れた頃にできたり、認められたい気持ちを手放したらうれしい言葉をいただくようになったり。
今度は埼玉の両親がうちの山の麓(ふもと)に引っ越してくることになりました。
年を取っていく両親が、いつでも駆けつけられる距離になりとてもうれしいです。
そして、つい溜まっていく物の整理。
家と身体は同じだそうで、家の掃除ができていないと身体も滞るそうです。
身体に関しては、冬に溜め込んだ脂が溶けだし、浄化しきれなかった脂が血中に入りトラブルの原因になります。
春に弱りやすい肝臓は脂のダメージを受けやすいので小松菜や、春菊など青菜、梅酢の酸味をいただくといいようです。
草木や大地ともに、美しい春を迎える支度をしていきたいですね。
(2017年2月8日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)
2017年1月1日号~2022年12月1日号
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