MK新聞の社説記事「強制値上げで減収なら賠償請求を 新法は事業者の創意工夫を阻害する」2009年9月16日

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MK新聞の社説記事「強制値上げで減収なら賠償請求を 新法は事業者の創意工夫を阻害する」2009年9月16日

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞の2009年9月16日号に掲載された社説記事の全文です。
「タクシー再規制は事業者の創意工夫の放棄」と題して論じています。

強制値上げで減収なら賠償請求を 新法は事業者の創意工夫を阻害する

エムケイ株式会社 代表取締役社長 青木信明

全国400台規模の増車 拡大路線は一旦終息させる

いよいよタクシー適正化特措法の施行が本年10月1日に迫り、運輸行政も事業者もそれぞれに新しい時代に対する備えにあわただしくしており、全体的に2002年の規制緩和時に似たある種の高揚感に包まれている感がします。2002年は東京MK、京都MKは増車、大阪MKはタクシー事業の開始、名古屋MKの新規許可申請、神戸MKはタクシー事業に先駆けて空港シャトル事業の新規許可申請を行うなど、MKグループとして新しい地域での展開のため一気に拡大した年でした。お客様への良質なサービスの提供と安い運賃で高い評価をいただき、その後の7年間少しずつではありますが業績を伸ばして来ました。
そして今、再規制を目前としてMKグループでは新しく本年誕生した札幌MK、滋賀MK、福岡MKを含めた全国8都市でそれぞれ50台規模の増車を行ってきます。これまで最後まで判断を待った東京MKについても50台の増車届けを行いました。タクシー適正化特措法下では原則として新たに発生した需要に対してのみ増車が認められる、とされていますが、私どもとしましては基本的にこの1~2年の間は増車は出来ないものと考えており、現状での採用計画と増車による需要拡大の見込みと収支予測など総合的に判断しての増車です。本来であれば5ヵ年事業計画に基づき徐々に新規進出や増車などで拡大して行く計画でありましたが、昨年の特定特別監視地域の指定に始まりこのたびの新法によって、この1年は大変な駆け足となりました。これまでの拡大路線から一旦軌道修正を行い、今後数年間はグループ約2,100台体制で事業を行いことになります。

再規制を機会ととらえて自らの足元を見直したい

新規参入を阻害し既得権益を保護するのみの再規制に一貫して反対の立場をとる私どもとしましては、一連の規制強化により早急な拡大を余儀なくされ大きな負担を強いられましたので、タクシー適正化特措法には大いに不服はあります。しかしながら国会において法律として制定された以上はこの法律を遵守しなければなりません。法の精神を理解し、私どもとして何が出来るかを考えたとき、タクシー離れを起こした利用者をいかにして引き止めるか、需要を喚起するにはタクシーが消費者にとって厳しい家計から支出をする価値のあるものということをご理解いただけるように知恵を絞り経営努力するしかないのです。
再規制をひとつの機会ととらえ、早急な拡大によりややもすると質の低下を起こしているかもしれないという認識の下で、MKタクシーのサービスを我々自身もう一度足元から見直しています。8月より京都MKをはじめ各社アンケートハガキを配布しお客様の声を頂戴しております。これまで約7万通を超えるハガキをご返信いただき、多くはお褒めの言葉をいただいておりますが、全体の3%はお叱りをいただいており、これらの声を会社の宝として社員教育に役立てております。

強制的な運賃値上げで減収減益なら補償請求

我々事業者は、法は法として遵守する立場にあると申し上げましたが、法律に規定されない公示通達や審査基準などの処理方針は運輸行政が法律のなかから作り出した1つの解釈であるという認識を忘れがちです。同一地域同一運賃は道路運送法に定められたものではなく、ひとつの運用方法であったために、弊社の全国初の運賃値下げ裁判において同一地域同一運賃は独占禁止法違反であるという司法の判断が下されました。公示通達は法律ではない、ということが分かった画期的な出来事でした。
この度の運賃政策は可能な限り同一地域同一運賃に近づけようとする意図がありありと見て取れます。まずは自動認可運賃の幅を10%から5%に縮小し、現在の下限運賃を採用する事業者を下限割れ運賃として、下限割れ運賃の審査は厳しくし同時に監査を強化することでワンコインをはじめとする低額運賃の継続認可を断念させて強制的に値上げさせるようにもっていきます。
運賃政策は経営戦略の根幹であり、各社の自由意志のもとに決定すべきものです。国が強制的に運賃を値上げさせることは談合やカルテルなどを通り越し、公正取引委員会が見過ごすはずはありません。
また仮に強制的に運賃値上げを余儀なくされたとき、社員所得も会社利益も維持できていたとして、値上げにより利用者が減りこれまでより減収減益したとするならば、その責任の所在はどこにあるのでしょうか。私どもとしては差額の補償について国家賠償請求を行うべきものと考えます。

公示通達は法律ではない利用者利便を基準に判断

タクシーは質の向上という課題を積み残したまま、再び規制時代へと戻りゆきます。各事業者の経営努力や利用者の評価というものを考慮せずに、新法において事業者を十把一絡げに取り扱う運輸行政の手法は社会主義的な発想であり、現在の成熟しつつある消費者市場から目を背けています。
我々は利用者の声を聞きつつお客様の利便と安全を第一に粛々と事業を行いますが、運輸行政の「ひとつの解釈」が利用者利便に反するものであれば、改善を求める行動をとる必要があると痛切に感じております。

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