祇園祭は山鉾を飾る「懸装品」にも大注目!16世紀のヨーロッパで作られたタペストリーも

祇園祭の山鉾巡行は、装飾品である懸装品(けそうひん)の絢爛豪華さから「歩く美術館」とも言われます。
町衆たちが大切に伝えてきた懸装品のなかには、16世紀のベルギーで作られたタペストリーまであるというから驚きです。
祇園祭を見に来られた際には、山鉾の懸装品にも注目してください。
西洋から来たものを取り入れている京都人の“粋”

四条室町を進む鶏鉾の見送り 2022年7月17日 撮影:MKタクシー
安土桃山時代から江戸時代にかけて、祇園祭の各山鉾は豪華な飾り付けを競うようになりました。
西陣織はもちろんのこと、ゴブラン織(フランス織物の一種。精巧さとあざやかな色彩で有名)の飾りをつけたの祇園祭山鉾が登場しました。
山鉾を装飾する飾り物や幕地を、懸装品(けそうひん)と言います。

祇園祭礼図 出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム https://colbase.nich.go.jp/collection_items/kyohaku/A%E7%94%B2368?locale=ja
例えば鶏鉾(にわとりほこ)の背面に飾られる懸装品(けそうひん)の見送りは、16世紀にベルギーで製作されたタペストリーです。
元は1枚のタペストリーだったのを3分割したもので、残りは霰天神山(あられてんじんやま)の前掛と長浜祭(滋賀県)の鳳凰山の見送りとして使われています。
同様に、白楽天山の前懸は、16世紀にベルギーで製作されたタペストリーです。こちらも三分割され、残りは大津祭(滋賀県)の月宮殿山と龍門滝山の見送りとして使われています。
これらのタペストリーは、16世紀末頃に南蛮貿易によって日本に渡来したと考えられていますが、詳細は不明です。

新町綾小路を進む白楽天山の前縣(新調前) 2022年7月17日 撮影:MKタクシー
当時でもすでに数百年の歴史を持つ祇園祭に、西洋から来たものを何のためらいもなく山鉾へ取り入れているところが京都人の“粋”を感じさせます。
京都人というと、保守的な人々だと思われがちです。
京セラや任天堂、日本電産などを生み出したり、パンの消費量が日本一であることからもわかるとおり、京都人には新しいもの好きな気質があるのです。
今も伝統技術の粋を凝らして新調される懸装品

2018年に新調された太子山の胴懸 撮影:MKタクシー
古くから伝わる織物は重要文化財の指定を受けるものも多く、祇園祭の山鉾が「動く美術館」と呼ばれるゆえんです。
祇園祭の山鉾は側面や後方など四方から鑑賞するのが長年見続けている京都人的なポイントです。
毎年どこかの山鉾では懸装品が新調されており、新しい懸装品をチェックするのも楽しみのひとつです。
元のデザインのまま復元新調されることもあれば、全く新しいデザインで新調されることもあります。
どちらにしろ職人へのプレッシャーは半端ありませんが、それにこたえるのが祇園祭にたずさわる職人の心意気です。

祇園祭礼図 出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム https://colbase.nich.go.jp/collection_items/kyohaku/A%E7%94%B2368?locale=ja
前述の祇園祭の鶏鉾の見送りも、2003年に2年の歳月と3,000万円の費用をかけて新調されたものが今は使われています。
もちろん原品も大切に保管されています。
新調にあたっては、どれも京都が誇る伝統技術の粋を凝らして作られたものです。
古いものを順次新しいものに交換していくことで、京都人は1,000年以上にわたって祇園祭を維持されてきたのです。
常に新しいものを作ることで、貴重な技術が現在にいたるまで京都人によって長らく京都で伝承されてきました。
2022年に新調された鶏鉾の下水引
2017年から1年に1枚のペースで製作されていたのが、ようやく完成したのです。
神紋などがならぶ緋色の羅紗でできた二番水引と、その下の四季の花鳥が描かれた三番水引です。
新しい三番水引の下絵は、以前の下水引と同じく、松村景文の絵が用いられています。
実に約200年ぶりの新調となります。

新調された鶏鉾の下水引 2022年7月13日 撮影:MKタクシー
2023年に新調された白楽天山 の 前懸・水引

山鉾巡行で四条高倉を進む白楽天山と前縣 2023年7月17日 撮影:MKタクシー
2023年に新調された放下鉾の下水引

山鉾巡行で四条河原町を進む放下鉾と下水引 2023年7月17日 撮影:MKタクシー
2024年に新調された橋弁慶山の前掛け

山鉾巡行へ向けて準備を進める橋弁慶山と前縣 2024年7月24日 撮影:MKタクシー
2025年は大船鉾の水引が新調

水引新調前最後の山鉾巡行を行う大船鉾 2024年7月24日 撮影:MKタクシー
祇園祭 八幡山の水引「十長生図」の原画を描いた韓国人の女流日本画家の鄭琡香さん
MK新聞1986年7月7日号の掲載記事

八幡山左側面上部の水引「十長生図」 2016年7月17日 撮影:MKタクシー
せっせと描くしかない
―八幡山の水引「十長生図」が話題になっていますね。
金曜日にお披露目で急に有名人に囲まれて、翌日は記者会見。で終わったら心カラッポ。
それで土、日と野洲に逃げ出して麦畑に寝転がってた。二日間、心のアカが抜けて帰ってきた。
本当に畑のおばちゃんみたいになって、せっせと描くしかないといぅ感じです。
―祇園祭りの装飾品には朝鮮製のものが少なくないとか。
明のものと思われていたもので朝鮮製だった例がかなりあることがわかってきた。
今度の仕事もそれで私に描かせようとなったらしい。
―素晴らしい出来ばえです。
元井能先生が「見えない女の力が大きかった」とおっしゃったけど、原画も刺繍も女。
刺繍する人の感覚が凄く、虎の毛並や遠近感もビチッと出て、デザインした方がビックリした。
―それにしてもなぜ日本画?
韓国は水墨画中心で彩色画は李朝期まで民画や仏画がありましたが衰退しました。
いま彩色画といえば洋画です。
―原色のイメージの強い国なのに不思議ですね。
水墨画は精神的ですが墨だけではもの足りない部分があって、色彩が習いたくて韓国に留学中の主人と結婚後、京都芸大の日本画科に留学しました。
だから二年間は離れ離れの七夕さんだった。
―あの絵(壁に掛けてあった源氏物語絵巻)は模写ですか
韓国で水墨や四君子(図)で運筆をやり、日本では模写。ある意味で廻りが長い。
四十二歳で無名というのはいないよ。私と同じクラスだった人がむこうでは中堅です。
(京都芸大に留学する若き韓国人芸術家たちの姐御的存在。いかにも面倒見がよさそうだ)
彼等は先輩を大事にするから何をするにも必ず確認をとって行動する。入ってきた道は様々だけど、よく頑張っている。
一緒にグルーブ展したり。芸大で固まって留学生というのも初めてだし、韓国のいいイメージを日本の学生たちに残してい<ことも大事だと思い。
近くの国なのに悪い話が多いでしよ。いい意味で行っている人は知ってて言ってくれるけど、観光などで行ってる人の口が悪い。
それが悔しいのよ。別に愛国者じゃないし政治家でもないけどね。
チョンスクヒャン
1944年 韓国全羅南道生まれ
1967年 韓国国展に入選。
1968年 弘益大学東洋画科卒業
1973年 京都芸術大学日本画研究科留学
1976年 修了
1976~77年 京都、ソウルで個展
1978年 ソウルの国際美術展出品
1983、85年 俵屋画廊で個展
1979、1980年 民話絵本「ヘンニムとタルニム」「フンブとノルブ」を出版
韓国芸術協会会員創画会所属
おわりに
MKトラベルが案内する宵山散策ツアー
祇園祭・前祭の宵山が行われる2025年7月14日(月)~16日(水)の3日間、「<祇園祭>山鉾・屏風祭 夜の散策 鑑賞ツアー」が催行されます。
祇園祭に詳しいMKトラベルのスタッフが宵山の山鉾や屏風祭をご案内するガイドツアーです。
英語でのガイドも可能です。
浴衣ならMKタクシーの「タクポきもの還元」がお得
夏の1ページを彩る祇園祭、やっぱり似合うのは浴衣姿です。
祇園祭を訪れるなら、是非浴衣でお越しください。
浴衣で歩き疲れたら、是非MKタクシーをご利用ください。
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京都観光には観光貸切タクシーもおすすめです。
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2021年7月15日(木)12:15より、MKタクシー公式インスタグラムで「祇園祭の山鉾めぐり~四条界隈を歩きながら~」のインスタライブを配信しました。
祇園祭山鉾連合会と南観音山保存会の役員にガイドいただきながら、山鉾を巡りました。

MKタクシーのオウンドメディアであるMKメディアの編集部。京都検定マイスターや自動車整備士、車載広報誌のMK新聞編集者、公式SNS担当者、などが所属。京都大好き!旅行大好き!歴史大好き!タクシー大好きです。