蓮の花の豆知識|夏を彩る美しく清らかな花の秘密とは
暑い夏に見頃を迎える蓮は、夏を代表する花です。美しい姿やかぐわしい香りはとても魅力的です。
泥の中から生まれて清らかな花を咲かせる蓮は、仏教では悟りを象徴する花として大切にされてきました。
蓮の花の豆知識について紹介します。
豆知識① ハチの巣のような花托(かたく)が「蓮」の由来
鹿持雅澄 1929年刊「万葉集品物図絵」 出典:国立国会図書館デジタルコレクション
「蓮(はす)」という名称は、花托(かたく)が蜂の巣のように見えるため、「はちす」と呼ばれていたことに由来します。
万葉集では、4首で蓮が詠まれていますが、いずれも「はちす」と読まれています。
蓮の花托 草津市立水生植物公園みずの森・蓮ガイドツアー 2021年7月13日 撮影:MKタクシー
実際に、蓮の枯れた花托はまるで蜂の巣のように見えます。
この花托の穴には、もともと蓮の種が入っていました。
秋になると上を向いていた花托は自重によって下を向きます。
すると、花托の中にあった種が下へと落ちるという仕組みになっています。
蓮の花托 草津市立水生植物公園みずの森・蓮ガイドツアー 2021年7月13日 撮影:MKタクシー
蓮の実は、食用としてみ利用されます。
若い実は、そのまま生食することも可能です。粉にひいて小麦粉のように使われつこともあります。
蓮の花托 草津市立水生植物公園みずの森・蓮ガイドツアー 2021年7月13日 撮影:MKタクシー
豆知識② たった4日で散る蓮の花
早朝に開き、お昼ごろに閉じる蓮の花
開きはじめた1日目の蓮の花 天龍寺 2018年8月4日 撮影:MKタクシー
蓮の花は、早朝に開き、お昼頃には閉じる開閉運動を行います。
開花から4日目に、蓮の花は全て散ります。
花の開き方も同じではなく、1日目はつぼみが5cmほど開いただけで花が閉じます。
開くのはわずかな1日目でも、受粉は可能です。
早朝5時ごろから開花し、午前10時くらいまでには閉じてしまうので、咲いている姿は朝のうちしか見られません。
おちょぼ口のように咲いたとっくり型の1日目の蓮の花をもっとも好む人もいます。
もっとも整った形の2日目の蓮 京都府立植物園・蓮池 2021年7月10日 撮影:MKタクシー
最も美しいのは2日目の蓮の花
蓮の花が蓮らしく最も美しく咲くのが、2日目の蓮の花です。
甘い香りももっとも強くなります。
深夜2時くらいからゆっくりと開きはじめ、朝7時ごろには全開します。お昼頃には再び花が閉じます。
一般的には、もっとも好まれるのが2日目の蓮の花です。蓮の花特有の香りがもっとも強いのも2日目です。
開ききった3日目の蓮 東寺 2018年8月8日 撮影:MKタクシー
3日目は、2日目と同じように深夜2時ごろから蓮の花が開きはじめ、朝7時くらいに全開します。
2日目とは異なり、大きく全開します。下の花弁も下がるのが2日目との違いです。
お昼頃からやや閉じますが、完全には閉じずに半開状態です。
蓮の花が午後も咲いている姿が見られますが、概ね3日目の蓮の花です。
散りゆく4日目の蓮 京都府立植物園・四季彩の丘 2021年7月10日 撮影:MKタクシー
何日目の蓮かはじっくり観察するとわかる
4日目には、夜中から再び開きはじめ、早朝には蓮の花が全開します。あとは開く一方で、早いものは朝9時ごろから散り始めます。そのままお昼前には花びらが散ってしまいます。
品種や個体によって差異はありますが、蓮の花はたった4日の命です。
蓮の品種によっては、日が経つにつれて色が薄れる退色が見られることもあります。
じっくり見れば、何日目の花なのかだいたい区別できるようになります。
開花から1日目から4日目の蓮の花を並べるとその違いがよくわかります。
やっぱり見た目も香りも一番は2日目の蓮の花です。
しかし、それぞれに違いがあってどれもやっぱりきれいですね。
完全に散った蓮 京都府立植物園 2021年7月10日 撮影:MKタクシー
豆知識③ 童謡の「れんげの花」は蓮の花
蓮と蓮華草(レンゲソウ)
蓮と似た名前の花にレンゲソウがあります。
春の田畑に咲くかわいらしい花です。
レンゲソウという名前の由来は、蓮華(蓮の花)に似た花を咲かせるためです。
しかし、レンゲソウはマメ科の植物で蓮とは全く異なります。
湿地に咲く蓮と異なり、湛水前の田畑に植えられるなど見られるところも異なります。
レンゲソウ(美山かやぶきの里) 2019年5月12日 撮影:MKタクシー
「ひらいた ひらいた」の童謡
童謡「ひらいた ひらいた」に登場する「れんげの花」はマメ科のレンゲソウではなく蓮の花であることが歌詞からわかります。
ひらいた ひらいた
なんのはなが ひらいた
れんげのはなが ひらいた
ひらいたと おもったら
いつのまにか つぼんだつぼんだ つぼんだ
なんのはなが つぼんだ
れんげのはなが つぼんだ
つぼんだと おもったら
いつのまにか ひらいた
1~2日目の蓮の花が開いたり閉じたりする様子を歌った童謡です。
江戸時代から親しまれてきた古い童謡です。
1~4日目の蓮(京都府立植物園の観蓮会) 2022年7月8日 撮影:MKタクシー
開花時に音が鳴るというのは俗説
蓮の花を見るなら朝早いうちがおすすめです。
なお、蓮の花が開花するときに「ポン」という音がするといわれることがありますが、俗説です。
とても幻想的な話しはありますが、離弁花である蓮の花の構造からみても、音がすることはありません。
実際に音がするかどうかは、学術的な調査も何度か行われていますが、蓮の開花音は確認されていません。
おそらく、蓮の近くでカエルが飛び込んだ音や、鯉が口をパクパクさせた音、あるいは蓮から落ちた雫の音を開花音だと聞き間違えたのだろうと考えられています。
豆知識④ 2千年の時を超えた幻の「大賀蓮」
大賀蓮(京都府立植物園) 2022年7月8日 撮影:MKタクシー
縄文時代の遺跡から発掘されたという種子が発芽
たくさんある蓮の品種の中でも、圧倒的に有名な品種は、「大賀蓮」でしょう。
2千年前の地層から出土した蓮の種から育成されたという、ロマンあふれる蓮です。
別名「縄文蓮」や「二千年蓮」とも言われます。
大賀蓮は、1951年に千葉市の遺跡から出土し、大賀一郎博士によって育成されました。
教科書にも掲載されるほど有名な逸話です。
大賀蓮(宇治市植物公園) 2022年7月18日 撮影:MKタクシー
ただし、出土した大賀蓮の種の正確な年代は実はわかっていません。
およそ2千年前の遺物が出土する遺跡から発掘されたのは確かですが、蓮の種は3粒しか出土しなかったため、当時の技術では蓮の種そのものの年代測定はできませんでした。
正確な年代測定が行われた蓮としては、約1,300年前のものが最古です。
大賀蓮(京都府立植物園) 2022年7月8日 撮影:MKタクシー
大賀蓮の多くは交雑種か別種
今や日本中いたるところで見られる大賀蓮ですが、実はその多くは純粋な大賀蓮ではありません。
大賀蓮とされている蓮のほとんどが漁山紅蓮という別の品種であったり、大賀蓮と別の蓮との交雑種です。
大賀蓮の名所と知られているところは多数ありますが、その多くは大賀蓮ではないと言っても過言ではないくらいです。
大賀蓮は、育てるのが簡単な品種ではなく、それほど多くの花を咲かせる品種でもありません。
しかし、有名な大賀蓮を欲しいという人は多く、結果として純粋な大賀蓮でない蓮が流通してしまっているのです。
以前に、大賀蓮と漁山紅蓮を取り違えてしまったことがあり、結果として漁山紅蓮が大賀蓮として大量に流通してしまったそうです。
条線が目立つ古代蓮(京都府立植物園) 2022年7月8日 撮影:MKタクシー
種レンコンから増やす大賀蓮
また大賀蓮から採れた種から育てた似ていない雑種が、そのまま大賀蓮として流通していることもあります。
基本的に、蓮の品種は種レンコンから増殖させる必要があります。種から育てると、他の品種と交雑してしまっている可能性があるからです。
純粋な大賀蓮には、以下の特徴があります。
・全体に小ぶり
・濃いピンクの筋(条線)はほとんどない
・葉はざらつかず滑らか
少なくとも漁山紅蓮とは以上の点で識別可能です。
京都東山の某寺院の本物ではない大賀蓮 2022年7月22日 撮影:MKタクシー
実際、京都東山の某寺院では、本物ではない大賀蓮を発見しました。
花の色がやや濃く条線が比較的目立ちます。何よりも、葉を触るとざらざらな点が決定的に大賀蓮とは異なります。
この大賀蓮は末寺から奉納されたものということで、関係者の誰一人として悪気がないことは明らかです。
なかなか難しい問題ですね。
豆知識⑤ 放生池と蓮の花
建仁寺・放生池の蓮 2020年6月29日 撮影:MKタクシー
お寺の放生池に咲く蓮の花
お寺の放生池に蓮が植えられていることがよくあります。
例えば京都でも天龍寺、相国寺、東福寺の放生池は蓮スポットとして知られています。
放生池というのは、捕えた魚や鳥を逃がす放生会(ほうじょうえ)を行うための池です。
建仁寺・放生池の蓮 2021年8月4日 撮影:MKタクシー
放生池と書いて「ほうじょうち」または「ほうじょういけ」と読みます。
この位置に池を設けるのは、禅宗寺院の典型的な伽藍配置です。
天龍寺は三門が現存しませんが、三門の正面に放生池を設けています。
京都では、他にも建仁寺の放生池でも蓮の花が咲いています。
建仁寺・放生池の蓮 2021年6月30日 撮影:MKタクシー
放生会を行うための放生池
放生会は、インドに起源がある行事ですが、神仏習合の影響で八幡宮系の神社でも取り入れられています。
京都では石清水八幡宮にも放生池があり、多くはありませんが蓮の花が咲いています。
石清水八幡宮で毎年9月15日に行われる石清水祭、かつて石清水放生会と言われていました。
葵祭(上賀茂神社・下鴨神社)、春日祭(春日大社)と並ぶ三勅祭のひとつとして、勅使が派遣される格式高い祭事でした。
今は山麓を流れる放生川(大谷川)で放生会が行われています。
天龍寺・放生池の蓮 見頃 2021年7月19日 撮影:MKタクシー
豆知識⑥ 食用や薬用としても利用される蓮
花の小径(城陽市)の蓮 2019年7月15日 撮影:MKタクシー
地下茎はレンコンに
肥大した蓮の地下茎は、レンコン(蓮根)として日本や中国では食用とされています。
蓮の根と書いてレンコンですが、実は根っこではなく茎なのです。
レンコンの穴は、地下茎にまで酸素を送り込むための通路です。レンコンの穴の数は、だいたい10個前後です。
宇治市植物公園 2021年7月18日 撮影:MKタクシー
蓮には多数の品種があり、大きく観賞用の花蓮(ハナハス)と、レンコン採取用の食用蓮に分かれます。
レンコンには多くのでんぷんが含まれており、蓮の葉が落ちる冬を乗り越えるために使われます。
そのため、葉がある春から初秋までは細い地下茎です。
冬を越す必要のない熱帯系の蓮は、レンコンを作りません。
寺田島垣内(城陽市)の蓮 2019年7月15日 撮影:MKタクシー
レンコン生産のトップは茨城県
蓮といえば、レンコンとして野菜としても人気です。
農林水産省の令和元年産野菜生産出荷統計によると、全国で44,500トンのレンコンが出荷されています。
都道府県別のレンコン出荷量では、
茨城県 23,000トン
佐賀県 4,330トン
徳島県 4,260トン
などとなっています。
京都府はレンコンの作付面積2ヘクタールとなっているものの、出荷量は記録されていません。
野菜としてのレンコンは京都ではほとんどありません。
かつて京都にあった巨椋池は、日本を代表する蓮の自生地で、夏には蓮見舟などで賑わってきましたが、京都では団子より花だったようです。
花蓮のレンコン 草津市立水生植物公園みずの森 2021年7月13日 撮影:MKタクシー
観賞用とは異なる食用の蓮
蓮の品種には、主に花を楽しむ観賞用の花蓮と、レンコンを採取する食用の蓮があります。
レンコン用の蓮は、レンコンが肥大化するように品種改良がされてきました。
鑑賞用の花蓮は、肥大化させる必要はないので、ずいぶんとほっそりしたレンコンです。
これでも食感は異なるものの立派に食用にもなります。
花蓮のレンコン 草津市立水生植物公園みずの森 2021年7月13日 撮影:MKタクシー
一方で花を楽しむ花蓮とは異なり、花の数は少なめです。とは言え、少ないながらも立派に育って美しい花を咲かせてくれます。花蓮の中には、もともとレンコン用の品種だったものもあるくらいです。
レンコン用とはいえ、美しい花を楽しませてくれます。
蓮の種も茎も葉も余すところなく活用
内果皮のついた蓮の種子は蓮肉(れんにく)という生薬として使われ、鎮静・滋養強壮などの効果があります。
蓮の茎も食べることができ、サラダなどに利用されることもあります。
蓮の葉は、中華料理や日本料理などでは、器として利用されます。
大きな葉っぱに様々な食材が載せられます。
蓮茶として、飲用にも利用されます。実は異なる部位を用いた3種類の蓮茶があります。
日本でもっとも一般的なのは、乾燥させた蓮の葉を使ったお茶です。
蓮の実の芯を乾燥させたお茶も、薬の一種として利用されます。
ベトナムで人気の茶葉に蓮の香りを移したお茶は一種のハーブティーです。
蓮は、すみからすみまで余すところなく、様々な活用方法がある植物です。
蓮の花も食べられる
あいのたに蓮まつりの「蓮すし」 2025年7月5日 撮影:MKタクシー
さらに、蓮は花も食べることができます。
滋賀県長浜市の「あいのたに蓮まつり」に出店される認定NPO法人つどいの「冥土カフェ」では「蓮すし」と「蓮の天ぷら」を食べることができます。
この蓮すしはぱっと目はショウガの酢漬け(がり)のおすしみたいですが、蓮の花びらを使ったすしです。黄色い糸のようなのは、蓮の花のおしべです。
蓮の花びらを甘酢で漬けたもので握ったすしで、蓮自体にはほとんど味がなく見た目どおり味も食感もショウガの甘酢漬けのおすしみたいです。
ただ、ほんのり蓮の華やかなかおりが漂います。
あいのたに蓮まつりの「蓮の花の天ぷら(右上)」と「蓮の花のおしべ(下)」 2025年7月5日 撮影:MKタクシー
続いて蓮の花びらとおしべの天ぷらです。
やはり蓮自体にはあじはなく、天ぷらのさくっとした食感を楽しむ料理です。
天ぷらもやはり蓮のかおりが漂っている気がしますが、もしかしたら外の蓮のかおりがここまで届いているのかもしれません。
あいのたに蓮まつりの「冥土定食」 2025年7月5日 撮影:MKタクシー
この蓮すしと蓮の天ぷらが食べられる冥土定食は他にしいたけの寿司、しいたけ煮、しいたけスープ、野菜の天ぷらがついてたった500円でした。
皿代わりに使われているのも蓮の葉です。
他にも蓮の実ごはんなどもあり、蓮尽くしを楽しめます。
豆知識⑦ 織物が織れる蓮の糸
蓮の糸(京都府立植物園の観蓮会) 2022年7月8日 撮影:MKタクシー
蓮の茎にある藕糸という繊維
蓮の茎を折ると、糸状の繊維があります。
これは、茎のなかを通っている維管束です。
レンコンを切ったときにも糸を引くように糸状の繊維が出てきますが、同じものです。
この繊維をたばねたものを、藕糸(ぐうし)と言います。
気の遠くなるような時間をかけて、蓮からわずかしか取れない貴重な繊維です。
古くから、藕糸と絹糸を使って作った織物は聖なるものとして扱われてきました。
當麻寺の蓮 2008年8月2日 撮影:MKタクシー
ミャンマーでは藕糸の織物も
日本では、奈良の當麻寺(たいまでら)の当麻曼荼羅が蓮の糸から作られた織物として有名でした。
中将姫伝説では、仏の助けもあって、一晩で織り上げられたと伝えられています。
しかし、近年の調査によると、藕糸は使われておらず、絹製であることが判明しました。
ミャンマーでは、今も本物の藕糸を使った織物があるそうです。
前述のとおり、非常に手間暇がかかる藕糸の織物は、世界で最も高価な織物のひとつです。
當麻寺の蓮 2008年8月2日 撮影:MKタクシー
豆知識⑧ 消えた蓮群落。烏丸半島の謎
烏丸半島の蓮と近江富士 2009年7月4日 撮影:MKタクシー
蓮群落が2016年に突如消滅
身近な花である蓮の花ですが、いろいろ謎も残されています。
近年の京都近辺で起こった蓮に関する謎の事件と言えば、「烏丸半島の蓮消滅事件」でしょう。
滋賀県草津市にある琵琶湖につき出た烏丸半島は、広さ13ヘクタールにも及ぶ国内でも最大の蓮の大群落がありました。
その蓮の大群落が、2016年に突如として消滅したのです。
烏丸半島の蓮 2007年8月4日 撮影:MKタクシー
夏の重要な観光資源だった蓮群落
烏丸半島の蓮は、それほど歴史が古いものではありません。
蓮が観光資源として注目されるようになったのは、戦後のことです。
烏丸半島自体が、戦後の琵琶湖開発に伴う浚渫泥を使った埋め立て工事で今の形になりました。
烏丸半島の蓮と近江富士 2008年7月25日 撮影:MKタクシー
烏丸半島の蓮の起源もはっきりしていません。
おそらくは、どこかから流れ着いたか誰かが持ち込んだ蓮の花が広がっていったのでしょう。
ほんのわずかの蓮の花が、数十年かけて13ヘクタールにまで広がっていったのです。
烏丸半島の蓮と近江富士 2008年7月25日 撮影:MKタクシー
夏の琵琶湖を代表する観光資源として、湖岸から蓮を楽しむだけではなく、舟や熱気球から眺めることができる人気スポットでした。
蓮の開花期間中には、あたりには常に甘い蓮の花の香りがただよっていました。
1996年には蓮の花の大群落が見られる地点に草津市立水生植物公園みずの森が開館しました。
ハスやスイレンをテーマにした珍しい植物園です。
烏丸半島の蓮 2007年8月4日 撮影:MKタクシー
消滅の原因は自然の摂理か
その蓮の花の大群落が、何の前触れもなく2016年に消滅したのです。
当初はミドリガメやアメリカザリガニによる蓮の食害が疑われました。
専門家による1年間の調査の結果、蓮の大群落が消滅した原因は
・湖底の泥土層が砂へと変化
・積み重なった蓮の枯死体からのメタンガスの発生
であることが判明しました。
外来生物の侵入や、人為的な環境変化が原因ではありませんでした。
蓮が数十年間かけて泥土の栄養を使い果たした結果であり、一種の連作障害です。
自然の摂理に沿ったものでした。
烏丸半島の蓮大群落に集まる人々 2012年7月29日 撮影:MKタクシー
京都随一の蓮の名所「巨椋池」も消滅
復活には長い歳月が必要
2018年には草津市によって蓮の復活が可能かの調査が行われましたが、結果は芳しくありませんでした。
泥土層が復活し、枯死体が完全に分解されるまで蓮の花の大群落の復活は困難ということでした。
おそらく、復活できる状態となるまでには、まだまだ長い歳月がかかることでしょう。
蓮の花の大群落が育たなくなった原因は判明しましたが、元気だった蓮の大群落がたった一年で突然消滅した理由はわかっていません。
今だ、蓮は謎を残した花なのです。
烏丸半島の蓮大群落 2012年7月29日 撮影:MKタクシー
滋賀県草津市の「水生植物公園みずの森」では、
地域住民や子どもたちが参加してハスのレンコンを植え付ける「ハスいっぱいプロジェクト」が行われています。
この活動は2017年からスタートし、近隣の小学校やこども園の児童・園児、応募した市民の方々が毎年レンコンの植え付けを行っています。
この活動が続けば、いつかまた素晴らしい蓮群落が復活するかもしれませんね。
豆知識⑨ 寺名に「蓮」がつく寺院
仏教と蓮の花は切っても切れない縁があるため、寺名に「蓮」とつく寺院は多数あります。
挙げていけばキリがありませんが、大蓮寺以外の名の知られた寺院を挙げます。
ちなみに、京都府神社庁のホームページに掲載されている神社の1,570社中には、「蓮」が社名につく神社はひとつもありませんでした。
全くないというのはやや意外です。
頭に「蓮」が付く寺院
- 蓮華王院(れんげおういん)〈東山区東山七条〉
三十三間堂の正式名称。
- 蓮華寺(れんげじ)〈左京区上高野〉
池泉鑑賞式の庭園で知られる寺院。
- 蓮華寺(れんげじ)<右京区御室(おむろ)>
五智山の山号で知られる。1928年に音戸山の山上から仁和寺の東隣に移転。
- 蓮光寺(れんこうじ)<下京区寺町五条>
駒止地蔵で知られる。長曾我部盛親の墓所。
お尻に「蓮」が付く寺院
- 金蓮寺(こんれんじ)〈北区鷹峯(たかがみね)〉
四条道場と言われた時宗寺院。1928年に四条寺町から鷹峯に移転。
- 青蓮院(しょうれんいん)〈東山区粟田口(あわたぐち)〉
粟田御所と呼ばれた天台宗の門跡寺院。「蓮」が付く寺の中でも最も著名。
- 宗蓮寺(そうれんじ)〈北区中川〉
北山杉の里にある寺院。シャクナゲやクリンソウ、紅葉が美しい。
- 妙蓮寺(みょうれんじ)〈上京区〉
本門法華宗の大本山。十六羅漢の庭や妙蓮寺、御会式桜などで知られる。
途中に「蓮」が付く寺院
- 上品蓮台寺(じょうぼんれんだいじ)〈北区紫野〉
「十二坊」と通称される真言宗の寺院。定朝の墓や頼光塚がある
- 浄蓮華院(じょうれんげいん)〈左京区大原〉
日本における声明(しょうみょう発祥の地といわれる。宿坊あり。
蓮華寺の庭園 2018年11月30日 撮影:MKタクシー
「蓮」が付く僧侶
ついでに、「蓮」が付くお坊さんも上げておきます。
- 住蓮(?~建永2年(1207年))
法然の弟子で承元の法難で処刑される。
- 日蓮(承久4年(1222年)~弘安5年(1282年))
日蓮宗(法華宗)の宗祖
- 蓮如(応永22年(1415年)~明応8年(1499年))
本願寺中興の祖
- 蓮月(寛政3年(1791年)~明治8年(1875年))
大田垣蓮月。蓮月焼で知られる陶芸家で歌人の尼僧
それほど多くはありませんが、日蓮と蓮如というビッグネームがいます。
上記には挙げませんでしたが、子だくさんの蓮如には「蓮」が付く人が多数います。
蓮乗(越中井波瑞泉寺・加賀若松本泉寺)
蓮綱(加賀波佐谷松岡寺・鮎蔵坊)
蓮誓(加賀滝野坊、九谷坊、山田光教寺、越中中田坊開基)
蓮淳(近江大津顕証寺、河内久宝寺顕証寺・伊勢長島願証寺)
蓮悟(加賀崎田坊、中頭坊、清沢坊、若松本泉寺)
蓮芸(摂津富田教行寺・摂津名塩教行寺)
豆知識⑩ 名前として大人気の「蓮(れん)」
近年は人気上位の名前
蓮は、男の子の名前としても非常に人気があります。
通常は「れん」と音読みします。
明治安田生命の調査によると、1999年に初めてベスト10圏内の9位に入りました。
その後も上位に入り続けています。
参考サイト:生まれ年別名前ベスト10 – 明治安田生命
ここ最近では、「蓮」は最も人気がある名前です。
「れん」という音の響きもあるでしょうが、同じ読みの漢字はいくらでもあります。
やはり、花の蓮に対する良いイメージが人気の大きな理由でしょう。
わが子の名前にしたいくらいレンコン好きな人がそんなにたくさんいるとも思えませんし。
蓮くんたちが大きくなるにつれた、蓮の花の人気もどんどん上がっていくことは間違いないでしょう。
蓮の字が男性に使われるのは日本特有
ところで、中国でも人名に「蓮」という字は比較的よく使われます。
しかし、女性の名前として使われる場合が多いです。
英語圏でも”lotus”という名前はありますが、やはり女性名です。
日本と海外では、蓮に対する男女のイメージが異なるというのは面白いですね。
おわりに
蓮の名所は全国各所にありますが、特に京都にはたくさんあります。
京都府立植物園、法金剛院、大沢池、三室戸寺・・・といくつも名前が上がります。
いつも混雑してる印象のある京都ですが、さすがに夏の時期は人も少なめです。
真夏の京都観光もおすすめです。
村越三千男編「内外植物原色大図鑑」出典:国立国会図書館デジタルコレクション
しかし、暑さで有名な京都だけあって、昼間に電車やバスを乗り継いで歩いて巡るのは大変です。
早朝だとまだ涼しいですし、蓮の花が最も美しい時間帯ですが、電車やバスの本数が少ないです。
そんな京都の蓮の花を見に行くときに是非ご利用いただきたいのがタクシーです。
宇治市植物公園・観蓮会 2021年7月18日 撮影:MKタクシー
夏の京都は、春や秋とは違い、人の少ない時期です。だからこそ凛とした古都・京都の空気を感じていただけるでしょう。
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MKタクシーのオウンドメディアであるMKメディアの編集部。京都検定マイスターや自動車整備士、車載広報誌のMK新聞編集者、公式SNS担当者、などが所属。京都大好き!旅行大好き!歴史大好き!タクシー大好きです。