山の一家*葉根舎「葉根たより」【22】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2018年11月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
リリリリ…暑さが厳しい長い夏でしたが、山ではすっかり朝夕は肌寒くなり、秋の虫たちが美しい音色を奏でています。
「禾乃登(こくものすなわちみのる)」「草露白(くさのつゆしろし)」穀物が実り始め、葉に白露が宿り始める頃。
次々にやってくる大雨や台風、地震に穏やかでない日々ですが、ふと見上げると日差しは傾き空高く、秋の香り。身も心も充実する季節であるはずの秋。
少しでも早く、あたたかい日常が戻ってくることをお祈りしています。
<実りゆく田畑>
山を下りると、次々に刈りとられる田が広がっていますが、我が家の田は九月下旬から。
あと少しの稲刈りまで風雨に耐え、獣たちに狙われませんように。
雨の少なかった夏、里芋、しょうがへ川の水を汲む水やりに大汗を流しました。
大豆の土寄せも子供たちと汗を流しながら。
そんな季節は身体を冷やす夏野菜がとってもおいしいですが、こうして涼しくなってくると途端に里芋やショウガ、カボチャに栗などほっこりしたお野菜が恋しくなってきますね。
浄化作用の高い真菰茸(まこもたけ)ももうすぐ実りだしそうです。
<素朴であること>
雨が少ないと畑だけでなく、生活水も足りなくなります。
うちの村では、うちの前を流れる川の上流、標高約八三四メートルの西床尾山の川から水を頂き、特設水道を授けているので、何かあると村でできるところまで直し、要所だけ水道屋さんに頼みます。
設備の老朽化で毎年水が止まることがありますが、今回は初めて水源の水不足で数日間断水しました。
区長をする夫のげんはこんな時は数日間、修理や対応でつぶれてしまいます。
私は毎年の断水に慣れてきて、水道の水量が減ってきたら、断水の可能性があるのですぐに水を貯め、節約をして使います。
お隣のお婆さんの湧水を頂くこともできますが、帰りが急な坂道のため、元気な子供たちの出番です。
一輪車にタンクを積んで、楽しそうに汲んできてくれ、山に子供たちのにぎやかな声が響き渡ります。
不便なことがたくさんある暮らしですが、水など生活に必要なものがどのように成り立っているのか直接的に感じ取れるので、日常的に感謝の気持ちで暮らせます。
子供たちが湧水を汲んだり、薪を割って生活をするなんて、どこの国にいるのだろう、なんて不思議な気分になったりもします。
不便でも美しい自然に囲まれているから常に恵はあり、豊かな心でいられるからでしょうか、ずっとここで暮らしていたい、と感じています。
<カラダノート>
秋は、肺と大腸が弱り、咳や痰が出やすくなる季節。
脂や乳製品の取り過ぎからくるので、脂を溶かす大根やしょうが、ねぎ類や、食物繊維が豊富な玄米を頂きましょう。
九月二十三日は陰陽調和の秋分の日。節目になるので、少食やプチ断食を心がけましょう。
<おんおくり>
十月十三日から十一月六日は、京都府綾部市志賀郷の「竹松うどんgalleryうどん屋の蔵」にて個展をします。
今回のテーマは「おんおくり」。
頂いた恩を受けた相手に限らず、誰かへ送る、そして誰かがまた誰かへ送る…人も草木も虫も山も風も海もすべてが共にめぐっていきますように。
最終日は、ブローチ作りのワークショップをします。ブローチで誰かへおんおくり、してみませんか?
(2018年9月10日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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