山の一家*葉根舎「葉根たより」【20】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2018年8月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
雪の下、エゴ、野ばら、栗、ねむ、蛍袋、靭草と次々に咲き、季節のめぐりを知らせてくれる花々。
めぐりくるのが早い今年、やはり暑さも早くやって来ましたね。
朝日の山では、真夏でも窓を開けて眠るのはほんの数回。
しかし今年は、夏至過ぎに窓を開けて眠るほど夜も冷めぬ暑さ。
六月にそんな夜を過ごすなんて、初めてのことでした。
暦では、これから小暑、大暑を迎えます。
「温風(おんぷう)至(いたる)」「蓮始華(れんしか)」「土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)」
温風吹き、蓮の花咲き、土の湿気が蒸発し、蒸し暑くなる頃。
心臓や小腸に負担がかかりやすくなります。
焼き肉など焦がした動物性食品、コーヒー、ビールなど苦みのある嗜好品を控え、ゴーヤ、ピーマンなど苦みのある野菜、人参、梅干しなど赤い食品、三年番茶、玄米珈琲などをいただきましょう。
七月十九日から八月六日の立秋の前日までの夏の土用は特に気を付けたいですね。
梅干しの土用干し、衣類の虫干しをしながら、心と身体も太陽のようにからっと元気になりましょう。
<勢いをます草たち>
畑は夏野菜の支柱たてや、里芋、しょうがのうねの草刈りをして草敷き、田は田打ち器、畦、柵まわりの草刈りと草が元気いっぱい。
家まわりも草だらけ。後回しにしていると、ムカデや蛇が出てくるので、草刈りも大切な仕事です。
時間配分に悩みつつ、肩の力を抜いて、草のように強く、しなやかでありたいです。
<子供と畑>
人気の乾麺になる麦の収穫。兎、鹿にかじられながらも、何とか麦刈りの日を迎えられました。
夫のげんが刈り、子供たちは運んだり、落穂ひろい。
そして、足踏み脱穀、唐箕と手作業で丁寧に収穫し、天日干し、一年ほど熟成させて乾麺になります。
じゃが芋掘りは、楽しくおしゃべりをしながら。
毎年恒例のことなので、子供たちもよく段取りが分かっていて、あっという間に終わりました。
ご褒美は、子供たちが大好きなほくほくの新じゃがポテトです。
<かけ流しの田んぼ>
げんが何年も田と向き合い、冷たい山水でも元気に育つよう、試行錯誤の中からたどり着いた水の入れ方。
昼は止め、夜はドバーっとかけ流し、稲に酸素と刺激を与え、淀みをなくし、透き通った田にしています。
草が生えない工夫もうまくいっていて、すくすくとのびやかに育っています。
山育ちのげんの感覚と、美しい山水、空気でとってもおいしいお米です。
<楽しいお客さま>
六月は京都、アメリカ、スウェーデンからお客さまがいらっしゃいました。
スウェーデンからは、日本人のお母さんとハーフの九歳、六歳のかわいい子。
子供たちはすぐにうちとけ、山の中へ飛んで行き遊び始めました。
うちに海外の子供が遊びに来るのは初めてのことでしたが、子供は外見の違いなんて関係ないのですね。
薪運び、風呂焚き、芋ほり、梅干漬け、蛍探しなど、楽しい時を過ごしました。
六歳のエミちゃんは梅干しが大好きで、漬けた梅干ができる頃にまた来る、と言っていました。
おいしくなる魔法をかけてくれたので、ひときわおいしくできること間違いなしです!
<絵の納品>
絵の納品は発送になることが多いのですが、今回は近くのお客さまだったので、素敵なお家に納品へ行ってきました。
オーダー制作だったので、気に入っていただけるかドキドキしながら。
日々、ストレスにさらされることが多い現代の日本、心を和ませるために観葉植物を配置したお部屋、その植物たちと仲良く並びました。
山の草木の力が、毎日の暮らしにやさしく寄り添い、支えられますように。
<豪雨>
この原稿を書いている間に、豪雨がありました。
山の中の朝日の村、人や家は無事でしたが、土砂崩れは何ヵ所もありました。
道がふさがったり、田畑の柵が流れたり、田の水路が壊れたり。日常に戻るのは簡単ではないですが、みんなが元気で安心できる我が家があることが何より。
山の暮らしで日々、季節のめぐりを感じていますが、災害時は人間がしてきたことが巡り巡っていることを感じます。
自然の美しさも怖さも肌で感じているからこそできることとは何だろうか、と考えます。
さまざまな災害で大変な思いをされている方々が、少しでも早く穏やかな日々を過ごせるよう、祈っています。
(2018年7月8日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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