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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【349】|MK新聞連載記事

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MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2017年5月1日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

前回紹介したminikuraにはオプションとして「文書溶解サービス」というのがある。
minikuraについて改めて説明すると、ダンボール1箱単位で物を預かってくれるサービス。私は蔵書のために利用している。
宅配便による入庫や出庫の指示をするなど、箱の管理はインターネットを通じて自分自身で行なう仕組みだ。
利用しているのは1箱1ヵ月200円のプランで、レンタル倉庫を契約するより手軽で、料金も従来の同種のサービスより手頃なのだが、箱の数が多過ぎて毎月の出費は馬鹿にならない。
やむを得ぬ緊急の事情から預けたので、1年か遅くとも2年以内に箱はすべて引き上げ「自炊」するつもりだった。が、3年過ぎても1箱も手をつけられず、さらに半年経ち、このままではダメだと、今ようやく引き上げ始めたところだ。

で、「文書溶解サービス」。これは言わば、預けた箱を引き上げるのをあきらめた人向けのサービスだと言える。
箱に入れている物が洋服や雑貨ではなく、書類や本などの紙類に限ってminikura側で溶して処分してくれるというもの。
一時的なつもりで預けたが箱を引き上げられるだけの本を置く場所を結局は自宅に確保できなかったとか、このまま本を預け続けても恐らく今後読む機会(人生の残り時間)はないなどの理由から、未来志向でさっぱりするために思い切って、あるいは、愛着ある蔵書と再会しないまま処分するという辛い決断を下そうという人のために用意された選択肢だ。

「文書溶解サービス」は1箱540円。
本を自宅に引き上げられないまま、読めない本にこのまま1箱200円を毎月払い続けるのか、いっそ540円を支払って、蔵書という物への執着にケリをつけるのかという究極の選択だが、そもそも、minikuraに預けた時点で、利用者は本を自宅に収めきれなくなったらどうするのかという根本的な問題を先送りにしたのだと言える。
「一時的だから」「賢く利用すれば」と自らに弁明し、でも実際どうなるか薄々わかっていながら預けて、案の定、身動き取れなくなる……。

ネットの画面上で「文書溶解サービス」のボタンをポチリとクリックすればドロドロに溶かされてトイレットペーパーになってしまうギリギリのところに自分がこれまで親しんできた本の数々が今あるのだと思うと、複雑な気持ちになる。

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)



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