MK新聞の社説記事「強制的な値上げ制度に反対するお客様支持ある限り現行運賃で」2009年8月16日

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MK新聞の社説記事「強制的な値上げ制度に反対するお客様支持ある限り現行運賃で」2009年8月16日

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞の2009年8月16日号に掲載された社説記事の全文です。
「タクシー再規制は事業者の創意工夫の放棄」と題して論じています。

強制的な値上げ制度に反対するお客様支持ある限り現行運賃で

エムケイ株式会社 代表取締役社長 青木信明

タクシー適正化特措法に連動した規制強化が徐々に明らかになる

本年10月1日より特定地域のタクシー事業適正化・活性化特別措置法(タクシー適正化特措法)が施行されることを受けて、国土交通省や各地方運輸局では省令や公示通達などの詳細な取扱いを早ければ8月中にも形に出来るよう急ピッチに作業を進めています。先月7月には昨年に指定されなかった京都、名古屋をはじめとする地域が特定特別監視地域に指定され、新規参入や増車へのハードルが高まりました。
MKグループでは昨年夏より秋にかけて既得権益を保護するだけのタクシー再規制に反対し利用者視点のタクシー改革を求める署名活動を行いお客様を中心とする約54万名の声を国土交通省に届けました。しかしながらその声は届かず再規制は着実に進行し、国の再規制を嬉々として受け入れ新規参入や事業者同士の切磋琢磨、お客様の喜ぶサービスの提供を拒絶したタクシー業界は、自浄作用を失ったことでこのまま産業としての活力をゆっくりと失っていくのではないかという思いを強くしております。
お客様に信頼され選ばれるサービスを追求することこそ事業発展の原動力であり、お客様満足が従業員満足につながり、それが会社としての発展を引き起こすという当たり前のサイクルを何とかして維持するために、規制が強化されるなかではありますがMKグループ各社は全国で300台規模の増車を行う予定です。本当にお客様が必要としているタクシーはまだまだ市場に供給不足である、と私たちは考えているからです。

運賃への強い規制で低額運賃がなくなる

国土交通省のタクシー運賃制度研究会(座長山内弘隆・一橋大学大学院商学研究科教授)がこの度、今後のタクシー運賃審査のあり方についての報告とりまとめました。運賃のあり方は「適正原価に適正利潤を足したもの」として規定され、これまで10%の幅であった自動認可運賃は、その幅は大きすぎるとして狭くすることを挙げました。自動認可運賃の下限を下回る運賃の審査を厳格化し、合わせて重点的に監査を行います。将来的に運賃値上げが行われ、仮に値上げを行わずに運賃据え置きをした事業者が値上げ後の自動認可運賃の幅を下回れば、こちらも厳しい審査にさらされます。
例えば京都MKを含めて自動認可運賃の下限運賃を採用する事業者が比較的多い京都であれば、将来運賃値上げがあれば値上げに同調しなくとも、あいにく適正利潤が出なければ審査をパスできず強制的に値上げになるのです。
これら運賃についての規制は利用者に直接的に関わることですが、利用者不在のまま議論が進められたとしか言いようがありません。お客様に気軽にご注文していただきやすくするために、コールセンター設備費やオペレーターの人件費をかけ、違法な路上付け待ちを行わないために専用のりばを設置するなど、様々な面でタクシーの環境整備に投資すればするほど、かえって低額な運賃の継続維持をしにくくなるという制度設計では、利用者利便は低下する一方にならないでしょうか。MKグループ各社はお客様の支持がある限り、サービス水準をさらに高めつつ今の運賃を守るようより一層経営努力をして参ります。

適正利潤が出なければ値上げ、利用者獲得すれば不当競争の矛盾

適正利潤が出なければ強制的に値上げになりますので、これまで以上に売上の向上のための需要喚起策を講じなければなりません。お客様に安心してご利用いただくために安かろうまずかろうではなく、この厳しい経済環境下において低価格でも質の高いサービスを提供することで、お客様から支持を得て選ばれることを目指すことがタクシーに限らず企業としての一般的な在り方です。
しかしながら驚くべきことに、これらの経営努力が不当な競争を引き起こすこととなるおそれがあるとして否定されるのです。前記とりまとめによると『~中略~あるタクシー事業者の運賃が、地域の平均的な運賃と比べて低額なものである場合に、当該地域の市場の特性や、運転者の賃金が歩合制主体であることといったタクシー事業の構造的要因から、地域のタクシー事業が以下のような状態に陥るおそれがある場合の運賃についても、不当な競争を引き起こすこととなるおそれがあると認められる場合もありうるものと考えられる。
~中略~
② 地域の利用者の多くが他の事業者から当該事業者に転移し、当該事業者の収益性は確保される一方で、他の事業者は、運転者の労働条件を維持しようとする場合には採算割れの事業者の続出を招き、これを避けるためにこれらの事業者の運転者の労働条件の悪化、サービス水準、安全性の低下等を招くおそれがある場合』

事業者の経営努力が否定され どうして健全な発展が望めるか

一見すると過当競争をおさめることでサービス水準や安全性を確保するためにこのように判断したかのように書かれておりますが、正に企業としての経営努力を否定するものであり、一方で消費者は値段しか見ていないという如何にもお上的な発想ではないでしょうか。事業としての成功と利用者の選択性を認めないのであれば、早々にタクシー事業を国営化しては如何でしょうか。
私はこれまでタクシー事業の健全な発展のためには、経営者が汗をかき知恵を絞り、如何にしてお客様に選ばれて社員の豊かな生活を実現するかに文字通り命を懸けなければならないと考えてきました。国土交通省はタクシー経営者の意識改革をさせることこそが本来の仕事であり、サービス水準や安全性の低下は経営者自身が自ら首を絞める問題であり、そのようなことをないがしろにする者は利用者のためにも社会のためにも公共交通事業に携わるべきではないことを幾度も申し上げて来ました。
国土交通省がこの方針のとおりに今後の運賃審査の制度化を進めて行くのであれば、それはタクシー事業そのものの活性化・適正化ではなく衰退の第一歩であることをここに申し上げます。ます。2002年は東京MK、京都MKは増車、大阪MKはタクシー事業の開始、名古屋MKの新規許可申請、神戸MKはタクシー事業に先駆けて空港シャトル事業の新規許可申請を行うなど、MKグループとして新しい地域での展開のため一気に拡大した年でした。お客様への良質なサービスの提供と安い運賃で高い評価をいただき、その後の7年間少しずつではありますが業績を伸ばして来ました。
そして今、再規制を目前としてMKグループでは新しく本年誕生した札幌MK、滋賀MK、福岡MKを含めた全国8都市でそれぞれ50台規模の増車を行ってきます。これまで最後まで判断を待った東京MKについても50台の増車届けを行いました。タクシー適正化特措法下では原則として新たに発生した需要に対してのみ増車が認められる、とされていますが、私どもとしましては基本的にこの1~2年の間は増車は出来ないものと考えており、現状での採用計画と増車による需要拡大の見込みと収支予測など総合的に判断しての増車です。本来であれば5ヵ年事業計画に基づき徐々に新規進出や増車などで拡大して行く計画でありましたが、昨年の特定特別監視地域の指定に始まりこのたびの新法によって、この1年は大変な駆け足となりました。これまでの拡大路線から一旦軌道修正を行い、今後数年間はグループ約2,100台体制で事業を行いことになります。

再規制を機会ととらえて自らの足元を見直したい

新規参入を阻害し既得権益を保護するのみの再規制に一貫して反対の立場をとる私どもとしましては、一連の規制強化により早急な拡大を余儀なくされ大きな負担を強いられましたので、タクシー適正化特措法には大いに不服はあります。しかしながら国会において法律として制定された以上はこの法律を遵守しなければなりません。法の精神を理解し、私どもとして何が出来るかを考えたとき、タクシー離れを起こした利用者をいかにして引き止めるか、需要を喚起するにはタクシーが消費者にとって厳しい家計から支出をする価値のあるものということをご理解いただけるように知恵を絞り経営努力するしかないのです。
再規制をひとつの機会ととらえ、早急な拡大によりややもすると質の低下を起こしているかもしれないという認識の下で、MKタクシーのサービスを我々自身もう一度足元から見直しています。8月より京都MKをはじめ各社アンケートハガキを配布しお客様の声を頂戴しております。これまで約7万通を超えるハガキをご返信いただき、多くはお褒めの言葉をいただいておりますが、全体の3%はお叱りをいただいており、これらの声を会社の宝として社員教育に役立てております。

強制的な運賃値上げで減収減益なら補償請求

我々事業者は、法は法として遵守する立場にあると申し上げましたが、法律に規定されない公示通達や審査基準などの処理方針は運輸行政が法律のなかから作り出した1つの解釈であるという認識を忘れがちです。同一地域同一運賃は道路運送法に定められたものではなく、ひとつの運用方法であったために、弊社の全国初の運賃値下げ裁判において同一地域同一運賃は独占禁止法違反であるという司法の判断が下されました。公示通達は法律ではない、ということが分かった画期的な出来事でした。
この度の運賃政策は可能な限り同一地域同一運賃に近づけようとする意図がありありと見て取れます。まずは自動認可運賃の幅を10%から5%に縮小し、現在の下限運賃を採用する事業者を下限割れ運賃として、下限割れ運賃の審査は厳しくし同時に監査を強化することでワンコインをはじめとする低額運賃の継続認可を断念させて強制的に値上げさせるようにもっていきます。
運賃政策は経営戦略の根幹であり、各社の自由意志のもとに決定すべきものです。国が強制的に運賃を値上げさせることは談合やカルテルなどを通り越し、公正取引委員会が見過ごすはずはありません。
また仮に強制的に運賃値上げを余儀なくされたとき、社員所得も会社利益も維持できていたとして、値上げにより利用者が減りこれまでより減収減益したとするならば、その責任の所在はどこにあるのでしょうか。私どもとしては差額の補償について国家賠償請求を行うべきものと考えます。

公示通達は法律ではない利用者利便を基準に判断

タクシーは質の向上という課題を積み残したまま、再び規制時代へと戻りゆきます。各事業者の経営努力や利用者の評価というものを考慮せずに、新法において事業者を十把一絡げに取り扱う運輸行政の手法は社会主義的な発想であり、現在の成熟しつつある消費者市場から目を背けています。
我々は利用者の声を聞きつつお客様の利便と安全を第一に粛々と事業を行いますが、運輸行政の「ひとつの解釈」が利用者利便に反するものであれば、改善を求める行動をとる必要があると痛切に感じております。

 

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