MK新聞の社説記事「タクシー特措法可決で再規制へ転換 利用者視点の改革は実現困難に」2009年7月1日号

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MK新聞の社説記事「タクシー特措法可決で再規制へ転換 利用者視点の改革は実現困難に」2009年7月1日号

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞の2009年7月1日号に掲載された社説記事の全文です。
「タクシー再規制は事業者の創意工夫の放棄」と題して論じています。

タクシー特措法可決で再規制へ転換 利用者視点の改革は実現困難に

エムケイ株式会社 代表取締役社長 青木信明

特定地域では参入増車規制 低運賃の審査も強化

この度「特定地域のタクシー事業適正化・活性化特別措置法」が6月19日、国会において成立しました。このタクシー特措法の成立は、供給過剰や運賃競争によって起こる1台あたりの運送収入の減少による労働条件の悪化、法令違反や事故の増加などが、2002年の規制緩和によってもたらされたものであり、供給を抑制し運賃を同一地域同一運賃に戻すべきとするタクシー業界を中心とする訴えが背景にありました。
本法により増車は届出制から認可制となり、供給過剰とみなされた地域は「特定地域」に指定され、原則として新規参入や増車が不可能となります。また、自治体や地方運輸局、タクシー事業者、利用者、有識者などによる協議会を各地域に発足させ、タクシー事業の適正化・活性化について地域で取り組むとともに、事業者が協同して減車を行う協同減車の枠組みが作られました。
また自動認可運賃を下回る低額運賃には認可更新時に厳しい審査が行われ、各地に広がった低額運賃が今後認められない可能性を持つようになりました。これから10月の施行に向けて、国土交通省にて省令や告示通達のような運用面での詳細が取り決められていきます。

再規制反対署名54万名の声は届かず 利用者よりも既得権保護が優先される

MKグループでは昨年8月から10月にかけて、規制緩和に逆行する再規制ではなく利用者視点のタクシー改革を求める署名活動を展開し、お客様を中心とする約54万名様の署名を国土交通省に提出しました。昨年7月より規制が強化され新規参入や増車のハードルが高まったことに対し、既得権益を保護するのみではタクシー業界は良くならず、結果として利用者不在の状態は改善されないことを訴えました。
本特措法においては、特定地域に指定された地域において新規参入と増車が規制されれば、新しい発想でタクシーを変革する経営者も、意欲が高く創意工夫によってお客様に選ばれることを追及する事業者も生まれず、利用者にいかにして選ばれるかという競争意識、サービス改善意欲も起こらないのではないでしょうか。それは2002年道路運送法改正までに見られたタクシー業界そのままの世界が繰り返されるのみではないかと危惧いたします。

MKグループ8社は常に危機意識を持ち社員教育とお客様サービス向上に努める

MKグループでは本年、福岡、滋賀、札幌において相次ぎ開業し、着実に実績を伸ばしております。そこにはMKの基本である教育があり、お客様にいかに満足していただけるか、全社員一丸となって無線配車や専用のりばなどMKを選んでいただくお客様へのサービスに努めています。おかげさまで各社とも無線回数やのりば利用数は伸び続け、売上も高まって増車を行っています。
ドライバー採用の場面においては「タクシーはサービス業であり、きちんとした言葉遣いや挨拶や身なりをしている」「MKの理念を共有しお客様の満足が自分の満足であることを理解出来ること」といった一見すると厳しい選考基準と思われますが、当たり前に常識を身に付けた人材であればタクシー未経験者でも積極的に採用しています。採用後にも厳しい社員教育を通じて接客の基本を身につけます。
何故MKグループがこれだけ社員教育に精力を傾けるかと言えば、教育をおろそかにして現状にあぐらをかけば、瞬く間にMKは信用を失うという危機意識を常に持ち続けているからです。

消費者に評価される職場があるにも関わらず採用を抑制させ働く権利を不当に制限する

ところが本特措法において特定地域に指定され増車が出来ないとなれば、採用を抑制し、場合によっては雇用する従業員を解雇しなければならないという状況が起こります。本年4月に開業した札幌MKを例にとりますと、社員数は、開業時に65名のドライバー、13名の社内教育中のドライバー、17名の入社を前提として二種免許取得のために自動車学校に通う者の合計95名でした。初日より多くのお客様からの反響をいただきましたので、開業6日目には20台の増車届を提出。昨年7月に規制が一部強化され、これまでは即日増車出来ていたものが、2ヵ月前までに届出しなければならず、増車実行日は6月26日となりました。その間も採用活動は続け、毎週行う会社説明会には毎回20名以上の応募があり、1ヵ月後には合計118名まで増員しました。初月度の売上実績も高く、お客様にご支持いただいていることが分かりましたし、その実績がまたMKで働きたいという求職者を呼び起こしました。
しかしながら増車実施までの2ヵ月間はどれだけ社員数が増えようとも、乗る車がなければ働くことが出来ません。札幌MKではやむを得ず5月中旬の会社説明会を最後に、一旦採用活動を停止せざるを得ませんでした。2ヵ月目の実績は昼勤一稼動売上約1万4500円、夜勤約2万4000円、昼夜平均約1万9000円、1日あたりの無線回数と専用のりば利用の平均回数は約780件と、実績を伸ばし続けております。
このように利用者に支持され、企業側の採用意欲も高くて働ける職場があるにも関わらず、規制があることで働くチャンスを制限することになるのです。完全に増車規制がかかれば、経営者としては断腸の思いで人員の整理に手をつけざるを得ず、十把一絡げに増車規制をかける本特措法は視点を変えれば働く者の権利の阻害にしかなりえません。

新規参入や増車がなければ自主的に減車し需要は回復するか

本特措法では供給過剰抑制と需要拡大が目的とされていますが、需要喚起やサービス向上は各地域における協議会にて話し合われます。しかしながら新規参入を締め出し、既存事業者だけで果たしてどれだけの効果があるのでしょうか。
例えば今から12年前に東京に進出した東京MKの黒塗り車両は当時としてはもの珍しいものでしたが、今では大手タクシー会社も多数導入しています。MKが進出した地域においては他社のサービスも少し変わってきたというお客様からの声も聞かれます。
お客様が望むタクシーとなれるように経営者は血のにじむような努力をしなければ、タクシーそのものが消費者から排除される未来も想像に難くありません。市場にあふれた車両を減らせば需要が回復することはあり得ないでしょう。需要自体が減らないようにはどうすればよいかを政治家や国土交通省任せにするのではなく、もっとタクシー事業者自身が考えなければなりません。それには新しい発想を持った新規参入がこれからも必要なのです。

国交省の今後の対応を注視しMKグループは粛々と事業を継続

現時点におきましては、国土交通省から運用面での詳細が出されておりませんので、弊社としましてはこれまでと同様に粛々と各地においてお客様に選ばれるタクシー事業を続けてまいります。お客様におかれましては、今後ともご理解ご支援を賜りますとともに、タクシー再規制についてのご意見をお聞かせくださいませ。

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